昔の物書き目指す少年の使い古されたあるある

昔の物書き目指す少年の使い古されたあるある

社会人になって――

「もしもし。書太郎?今度の土曜、久々にどうよ?飲みに行かない?」

「土曜?もちろんOK。何時ぐらいに――」


数分後。

「もしもし。書太郎?たまには帰ってきたら?じいちゃんのお墓にも、もうしばらく行ってないでしょ?」

「ああ、今週も無理。こっちもいろいろあるから。」

「またそんなこと言って。遊んでるんじゃないの?」

「いやいや。もう大人なんだから。仕事とか、付き合いとか、本当いろいろあるから。」

「そうなの?ああ、そう言えば、習字の練習に、あんたの昔のノート何冊か使わせてもらったから。」

「ああ、そう。」


週末

「あれ、あんた帰って来ないって。」

無視して実家の自分の部屋にダッシュ。

使われたノートをチェーック。

「い―や――っ!!」

ぐちゃぐちゃ……!


スマホは存在せず、PCもそんなに普及していない時代、原稿用紙にかけるお金もなく、使わなくなったノートの余白や余ったページに、中二病的な小説を、学生時代に書いてありがち。


~*~*~*~


学校での休み時間――

「よう、書太郎。俺のクラス、次数学なんだけど、教科書忘れちゃって。貸してくれない?」

「おう、いいよ。」


次の休み時間

「書太郎。あ、ありがとう。」

目を合わせない友達。

「?おう。」

変に思い、貸した教科書をチェーック。

「い―や――っ!!」

ぐちゃぐちゃ……!


教科書の余白にも、授業中にふと思い付いた例のあれ的な小説の案を書いてありがち。


~*~*~*~


大学のキャンパスにて――

「お前趣味とかはないの?」

「実は、小説とか書いてる。」

「小説?マジ?読ませて?今持ってる?」

「う、うん。」

あれ的な小説はとりあえず卒業して、純文学的な作品を書き始め、自分ではそれなりに良いモノ書けたという思いと、承認欲求に耐えきれず、仲の良い友達にカミングアウト。読んでもらう。


友達読み終わって

「…うん。俺は嫌いじゃないよ。最後のシーンとか……」

「そう。ありがとう。」


トイレの個室にて

「い―や――っ!!」

ぐちゃぐちゃ……!


自分で思ってる程、良い作品じゃなくて、読んでもらった友達に気を使わせて、返事に困らせてしまいがち。そしてそれ、結構気付きがち……


~*~*~*~


カクヨム始めて――

「うーん、最近小説のネタないなあ……」

昔書いた例のノートの束が目に付く。

「お!もしかしたら何かネタがあるかも。」

とりあえず一冊手に取る。

「いや、でも内容はあれだしなあ。ヒントなんてあるかあ?それにあれ読み返すっていうのもなあ……いやいやいや、さすがに自分で書いた作品だし……よっしゃ!」


数十分後

「い―や――っ!!」

ぐちゃぐちゃ……!


自分で書いた作品、それなりの覚悟を持って読んだにもかかわらず、耐えきれず自分自身に居たたまれなくなってしまいがち。

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