ぐちゃぐちゃと「ぐちゃぐちゃの由来」

@yayuS

第1話

 さて、皆さんは「ぐちゃぐちゃ」という言葉の由来を知っているだろうか?

 大半の人は、散らかった様子を擬音として表した言葉だと答えるだろうが――実は違う。

 本当の由来は


「愚痴や、愚痴や」


 と、むかし、寺の偉い人が言い訳ばかりした弟子に対して、嘆いたことが起因らしい。

 そんな「ぐちゃぐちゃ」の由来となったエピソードを、今回は皆さんにお話してみようと思う。





 とある寺に二人の修行僧がおりました。

 一人は真面目に、真っ直ぐに心を鍛え、もう一人は真面目な男の陰で、常に手を抜き生活していた。

 ある日のこと、師匠は、「用事がある。明日の朝まで帰らない」と、二人に告げて出掛けたのだった。その間、いつもと変わらず鍛錬に励むようにと、言い聞かせて、寺を出た。

 当然、不真面目な弟子は、「こんな日くらい休もう。どうせ休んでもバレやしない」と、一切の修行を放棄した。

 寺の縁で日に当たりながら、瞼を閉じて眠りを楽しみ、寺の庭になる柿の木から実を毟っては、美味しそうに頬張った。

 師匠が出掛けて数時間。

 欲にまみれた生活を堪能していたのだが、幸福なその時間は長くは続かなかった。

 何故ならば、師匠がすぐに帰ってきたからだ。

 明日まで帰れないと告げた師匠の言葉を信じた弟子は、鍛錬を怠っていた姿を師に目撃されてしまった。


 師匠は「どうせ、そんなことだろうと思っていた」と、全てを見透かしたかのように弟子に告げた。

 そう。

 出掛けるというのは、弟子の怠慢を暴くための嘘だった。

 罰の悪くなった弟子は、とにかく言い訳を並べ捲し立てた。

 その姿をみた師匠は言った。


「愚痴や、愚痴やと五月蠅い!!」


 と。



 そこから筋の通っていない、散らばった意見を「ぐちゃぐちゃ」と言うようになり、散らかった様子などに使われるようになったらしい。


 なんて――全部、妄想なんだけども。

 ぐちゃぐちゃと言葉を並べたから、一人くらいは信じないかな。

 

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