恋の花が芽吹く

雨宮 苺香

- Episode -


 おめでとうなんて言えないよ!


 でもそんな幸せそうな顔見たら私じゃなかったんだなって納得しちゃうじゃんか。

 君を幸せにできるのはあの子だったんだなって……。


 私はたしかに君の幸せを願ってるよ。

 ずっと笑ってて欲しいと思ってる。

 でも! 私は君の隣でその幸せそうな顔を見たかったの。

 隣じゃないと私のこの想いの行き場がないんだよ。



 ねぇ、なんで私の気持ちに気づいてくれなかったの?

 なんで私に恋愛相談なんてしたの?

 君が私に使った〝友達〟という言葉。

 本来ならきらびやかで素晴らしい意味なのに、私にとっては不毛な恋を意味してたんだよ。


 私が君に言わざるおえなかった「応援してる」の嘘に気づいて欲しかった……。




 厄介な恋の芽が春の訪れに膨らみ過ぎてしまって、摘み取るにも根が深く張り過ぎてしまった。

 もっと簡単に諦められるタイミングで「付き合った」って聞けたら。

 そもそも君のことを好きになんてならなければ。

 なんて、この失恋をどうにか言い訳しようとする私は、引っこ抜けないこのおもいとにらめっこしていた。

 私の中で〝好き〟という感情は明確なのに、それ以外の嫉妬や羨望、気持ちの捨て方とかマイナスな感情がぐちゃぐちゃすぎて手に負えない。

 どうするべきか対処法を考えて、踏みとどまれ無かった私は君に向かって歩き出す。

 今からがどんなに遅いかわかっているのに、頭によぎった〝伝えちゃいたい〟が心音と一緒に加速してしまったのだ。



「ねぇ、好きだよ」



 無鉄砲にそう言い放つ私に、君は困惑よりも驚きが大きい表情を見せた。私は君が返事をしてしまう前に言葉で蓋をする。



「それだけ。わかってるから。ただ伝えなかったら後悔するだけだと思っただけ。

 え、と……、お幸せに、ね!」



 強がりを付け足して、私は彼から逃げるようにその場を立ち去った。

 頬にぬるい水が流れたことで、私はこのおもいが咲いてしまったことに気がつく。

 だからこそ、君の幸せを早く喜ぶために〝どうか早く枯れますように〟と、このかたおもいを抱きしめるように泣き続けた──。


 -END-

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恋の花が芽吹く 雨宮 苺香 @ichika__ama

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