カレーを混ぜて食べるボクと、分けて食べるキミ

椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞

カレーは混ぜる? 分ける?

「いただきまーす」

 

 ボクはカレーをガーッとかき混ぜて食べる。全部混ざりきった後に、パクリ。


 一方、ガールフレンドのフクちゃんは、ちゃんと分けて食べていた。


 ちょっとずつカレーをごはんにかけて、パクっとしている。

 

 ボクのママは、いつも帰りが遅い。

 そのためか、お隣のフクちゃんが気を使ってくれて、毎回お料理を用意してくれる。

 フクちゃんと一緒にごはんを食べているときが、ボクにとっては一番の幸せだ。


 今日はカレーである。

 小学校で出る給食のカレーも好きだが、フクちゃんちのカレーは絶品なのだ。


「ボンちゃんっていつも、混ぜて食べるよね」


 フクちゃんが、声をかけてきた。

 

「ダメかな?」


「ずっと同じ味にならない?」


「ならないよ」


 なったらなったで、ずっと同じカレーの味が楽しめる。


「カツカレーとかだと、どうなるの?」


「先にカツをどけて、混ざったカレーと一緒に食べるよ」


 でもカツカレーは、ごはんとカツだけって組み合わせもできるから、簡易カツ丼の完成だ。

 それはそれで、おいしいかもしれない。

 

「フクちゃんはたいてい、ごはんかルーが余るよね?」


「そうなのよー。いつもバランスが崩れるの」


 だいたい、ルーがあまりがち。


「そっちは、カツカレーとか食べやすそう」


「まあ、そうかもね」


 カレーを楽しみながら、他愛のない会話をする。


「ボクたちってさ、どっちもソースとかは、かけないよね?」


「もともと、カレーとして完成しているからね。知ってた? 市販のルーは、隠し味とか何も足さないほうがおいしいって」


 ボクは、スプーンを落とした。


「……マジ? ママも知らないんじゃないかな?」


 いつもコーヒーの粉とか、チョコレートを入れているけど。


「市販のルーはあれで味が完成しているから、隠し味なんか入れると崩れちゃうのよ。最近テレビで見たわ。『ダメダメー』とかやってたわよ」


 フクちゃんが、手をクロスさせる。


「そうだったのかー。ママに教えておくよ。でもフクちゃんのママが作ったこのカレー、おいしいね」


「そう? でも……」


 フクちゃんは、しょんぼりしていた。


「これ、わたしが作ったの」


「そうなの?」

 


「うちのママはルーから作るから、隠し味バンバン入れるわ。今日はママが町内会のお出かけしているから、わたしが作ってみたの。ルーも市販よ」


 おそらく、隠し味を入れてしまったのだろう。

 あれだけだめと言っていて入れてしまったのは、きっと入れてから気づいたんだ。


「だから、うちのママのカレーは、もっとおいしいの。わたしは作り方までは知らない。適当にごまかしたから、味が変になって」


「こんなにおいしいのに」


「そう?」

 


「うん。ボク、フクちゃんのカレー大好き」


「ん……!?」


 フクちゃんが、ワナワナと震えている。

 お腹壊したのかしらん?


「どうしたの、フクちゃん?」


「もーもー。あんたはそうやって、いつもこっちの感情がグチャグチャにするーっ。このアホボン! 天然ジゴロ!」

 

 ジゴロってなんだろう?

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