夕日に照らされながら、ふたりだけ。

@nekobatake

夕日に照らされながら、ふたりだけ。

「ねえ、レァナ。遊ぶ目的だけの架空の世界があるとしたらさ、どうする?」


 ミィアがまたおかしなことを言い出した。ミィアはすごく頭がいい女の子だけど、いつも変わったことばかり言うんだ。


「そんなもの……あるわけないって思う」

「そう? ずうっと昔はあったかもしれないよ?」

「あるわけないよ」


 否定的な私の言葉にも、ミィアは引こうとしない。


「だから、もしも! もしも、だよ。もしも、そんなものがあれば、面白くない?」

 

 ふたりだけの島で、今日も何もすることがなくて、ただ波打ち際で夕日を見つめる。

 それぐらい暇なので、ミィアの言葉に流されて想像してみる。


「面白くても、すぐに飽きそう」

「そうかなあ」

「……飽きなかったら、架空の世界での積み重ねを言い訳にして、本当の世界をないがしろにしそうじゃない?」

「えー、面白くないよー」


 ミィアの言う通り、私は面白くないし、ついでに頭も良くない。ミィアとは何もかも正反対だ。

 でも、私たちがこの世界に現れたのは全く同時だった。

 そして、刻まれた指令も同じ。


『プレイヤー』って人が来たら、私たちはこの島を案内する。

『サービス終了』って命令が出たら、私たちは役目を終える。


 この世界に現れたときから頭の中にその指令が残ってる。

 それがどういう意味か、私たちは知らない。

 知る必要もなく、ふたりだけの時が流れる。

 

 でも、時々思う。

『プレイヤー』っていう人はもう誰もいなくて、『サービス終了』っていう命令はもう誰も出せないんじゃないか、って。


 いつか過ごした日と同じように、今日も太陽が水平線に沈んでいく。

 それを見つめるミィアが寂しそうだから。

 


 ──そんなミィアの横顔が夕日に照らされてあまりに綺麗だったから。

 

 言い訳なんてそれぐらいで充分だ。

 私は彼女の頬にそっとキスをした。 


「ねえ、ミィア。ずっと、ずっと、一緒にいようね」

「うん、レァナ。もしも世界が終わっても──」

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