第2話
と言っても、今日診療するのは紅玉宮の主である
今年二十歳になる
房間にたどり着いた私たちは挨拶を済ませると、早速診療を始めた。
「んっ……」
途端に、ぴくりと
「さ、目を閉じて楽にしてください……」
甘く優しく囁けば、普段は勝気な
目をつぶったのを確認して、私はツ、と手を上に滑らせていく。
なめらかで形良い額には、丸い赤の柘榴石が確かな輝きを持って鎮座している。
それをじっくりと舐めるように、いやむしろ舐めまわすように、私は目を細めて観察した。額玉の輝きを確かめるこの瞬間は、いつ何度やっても心がときめく。
特に、健康な額玉を見れた時は、何事にも代えがたい喜びがある。
「……うん。今日もとても良い色合いですね。色が満遍なく濃く満ちているし、輝きもいつもより強い。
私は
途端に
「いいことなんて、特に……。しいていえば、
そう言う
私は内心苦笑した。こういう目で見られるのは慣れているし、好意を向けられること自体は全然嫌ではないのだけれど……最近、どんどん態度が露骨になってきている気がする。
ちらりと横にいる
あまり長居すると、よくないかもしれないなあ……。
そう思った私は、そそくさと帰ろうとした。
「よかったです。また何かありましたら、いつでも宝玉治癒師をお呼びください。それではそろそろ」
そこへ、
「あっ、
うっ……。まさかのお誘い。
普段だったらそのまま同席することも多いのだけれど、今回はどうしたものかな……。
私は頭を悩ませた。
というのも
すぐさま何人もの宝玉治癒師たちがありとあらゆる手を尽くしたのだが、一向に改善されず、一時は「もう治らないかもしれません」と言われ匙を投げられるほど。
担当になってすぐ、私はとある軟膏を調合した。
それはあまりに古すぎて、もっと効果のある軟膏に取って代わられたため今では使われなくなったものなのだが、同時に赤系の額玉にだけ効くのを覚えていたのだ。
私は早速、蜂蜜と
「大丈夫ですよ。
同時に体と心を落ち着かせる薬湯を飲ませ、一か月つきっきりで看病した所――
……と、そこまではよかったんだけれど……。
私は返答を待つ
治療時に誠心誠意お世話をしすぎたらしく、今はそばにいてくれなかった皇帝よりも、私のことを気に入りすぎてしまったんだよね。
といっても理由が理由だけに、冷淡な態度をとって
私は悩んだ末に、またにこりと控えめに微笑んでみせた。
「
「でも、紫瑶様がお好きな
その言葉に私はぴたりと動きを止めた。
口に入れると表面は固いが、その分中のさつまいものほくほくさが引き立つ。さらに砂糖でできた蜜の甘みも口の中で混ざり合うと、まさにこの世の極楽浄土とも呼べるほどの幸せで満たされるのだ。
また、作り立てあつあつのうちは砂糖も固まっていないため、箸で持ち上げるとツーッと砂糖の糸を引くのもいい。子どもの頃はわざと使用人に糸を引かせて、固まった砂糖の糸だけをパリパリと食べたものだ。
……そういえば最近、
そう思った私は立ち去るのをやめ、また
「……それでは少しだけ、ご相伴に預からせていただいても?」
「ええ、ぜひ!」
こうして私はまんまと
*
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます