六花とけて、君よ来い

泡沫 希生

六花とけて、私よ勝て

 友達に最近「明るくなった」とよく言われる。

 少し前のは暗くて話をしても面白くない、感情を押し込める人。今の私は明るくて楽しい話ができ、感情が豊かな人。

 高校生活はこんなに楽しいのかと毎日感動する。


「今日あったかいよね」

「ね」

明後日あさってとか結構暑くなるらしいよ」

「へぇ、そうなんだー」


 ふと気になり、教室を去ると私は雪の様子を確かめることにした。



 今年は大雪で、今日は暖かいが雪はまだまだ残り、足元でぐちゃっと表面の雪が跳ねる。除雪は人が通る所が優先だから、寂れた児童公園内の雪は一つも除かれず、一面大雪で覆われている。

 雪はその下に多くを隠す。土も草の芽も。

 人も同じで、怒りや悲しみなど本当の気持ちを隠すことがある。

 それはとても苦しい。けれど、人間関係に臆病なは本音をよく押し込んでいた。

 高校生になってから周囲に馴染なじむため更に押し込むようになり苦しんだ末、あの大雪の日ここで雪に飛び込んだ。

 膝上まで積もった雪に埋もれたかったらしい。どんなに気持ち良いのかと、そのまま眠りたいと。



 そうして本当には眠った。代わりに、閉じ込められていた私は出れた。


 表面が溶けかけた雪をぐちゃぐちゃかき分ける。雪の中ほど硬くて冷たい。

 見えてきたのはの姿。私を押し込んでいた

 の閉じたまぶたに触れる。ほのかに温かい気がする。

 が私を押し込む度、私は辛かった。ずっと自由になるのを夢見ていた。夢が叶い今は嬉しいけど、雪が溶けきったらが目覚めるように思えて。

 でも、起きるのなら起きろ。ある意味、私はそれを待っている。起きたと直接勝負したい、どちらが本当の私なのか。

 満面の笑みを浮かべ、を埋め直す。溶けかけた雪の表面を叩く。ぐちゃぐちゃ小気味よい音がした。

 不意に携帯が鳴る。取り出して通知を見れば、友達から週末の遊びの誘い。


 ああよ、早く起きて私の元に来い。その時、






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六花とけて、君よ来い 泡沫 希生 @uta-hope

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