KAC20233 ぐちゃぐちゃだったんだよ!

日々菜 夕

ぐちゃぐちゃだったんだよ!

 これは私が、この小さな本屋さんで働き始めたばかりの頃の話である。


 それが例えお爺ちゃんの脛をかじるようなものだったとしても。


 アルバイトだったとしても。


 私は、猫のみゃーこによる遊んで遊んで攻撃にも何とか耐えながら本の整理をしていたのである。


 だってね、ぐちゃぐちゃだったんだよ!


 それはもう、いい加減にしろって言いたくなるくらいの陳列だったの。


 特に目立ったのが将棋関連の本!


 お爺ちゃんの趣味全開の品ぞろえをしていると思われる将棋関連の本があちらこちらに入れてあったのだ。


 お子様向けの児童書の間にも、参考書の間にも、なぜか将棋関連の本が挟まれていたのである。


 だから私は、きちんと将棋関連の本がすぐに分かるように専用のコーナーを作り。


 そこにまとめたのをきっかけに、ありとあらゆる本を関連する分野的にまとめて並べ替えたのである。


 一般向けの漫画コーナーに成人指定の本が挟まっていた時なんてドン引きしたりもした。


 正直なところ完全にアウトな経営状態だったと思う。


 当初は、こんな状態だからお客さんが来ないのだと気合を入れて本の整理に取り組んだのに……


 きちんと売れ筋の本も調べて仕入れてみたりもしたのに……


 客足はちっとも改善しなかった。


 そうだよね。


 だって、こんなシャッター街にあるって時点でお察しの通り。


 私の住んでる街にも、大手のショッピングモールが出来て大半がそっちに行くようになっちゃったからである。


 実際に、服を買う時なんて私もお世話になっちゃっているくらいだし。


 大手の本屋さんだって入ってる。


 ぱっと見ただけで分かる品ぞろえの良さとか明るくてオシャレな雰囲気とか……


 どう考えても完敗なわけで。


 だから、わざわざ駐車場もないような小さな本屋さんに足を向けようと考える人じたいが少数派となるわけである。


 そして、始まっちゃった私のだらけた仕事っぷり。


 今日も、猫をもふりながら恋愛物のネット小説をパソコンで眺めているのである。


 おしまい 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

KAC20233 ぐちゃぐちゃだったんだよ! 日々菜 夕 @nekoya2021

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説