天国と地獄は表裏一体

くまの香

天国と地獄は表裏一体

 目の前に置かれたイチゴのパンケーキ、今流行りの店らしく2時間も並んだ。

 膨らんだ3段のパンケーキにピンク色のクリームがトロンとかけられ、その周りには苺とあと何か赤い実が散りばめられている。


 目の前に座った彼女が大きな口を開けてパクリと食べる。


  グッチャグッチャグッチャ…ピチャクチャクチャ


 彼女は同じクラスの女子で、思い切って告ったら何とOKがもらえたのだ。

 目がパッチリでまつ毛が長くクリンと反り返ってる。

 鼻もスッと高く、口はプルンと赤い。

 笑うと右側の頬に小さいえくぼができる。

 細いのにお胸とお尻は結構バインとしてる。

 スタイルが凄くいいんだ。



  グッチャ、ジュルンクチャクチャ


 髪はふわっとウエーブが肩にかかっていてさらふわだ。

 とにかく可愛い。

 うちのクラスで一番、いや、学年でも一番可愛いかもしれない。



  クッチャクッチャ、グッチャグチャグチャ、ジュルん


 そんな彼女が、何で俺の告白にOKをくれたのか謎だ。

 いつ見てもイケてる男子が側にいたのだ。

 1年の時から、誰と付き合ってるとか誰かが告ったとか女子達の話題にしょっちゅう上がっていた。

 3年生と付き合ってるって噂もあったのに。

 俺なんてチビだし地味だし運動も得意じゃないし頭も良くない。


  ムチュグチュ、チュル…ビロン


 あ、口からピンクの物体が飛び出た。

 頬張りすぎて押し出されたグチャっとした物体がテーブル、俺の皿の近くに飛んできた。


 彼女はそれを素手…指で摘んでまた口に押し込んだ。


「美味しいね」

「……あ、うん そーだね…」


 彼女にOKをもらえたと友人に話した時、とても残念そうな目をされたのだけど、それって……つまり、これか?これなのか?

 メッチャ可愛い子が大量に頬張った口を開けながら咀嚼、たまに飛び出す物体、そして、さっきから耳にこびりつく強烈な咀嚼音!


 やめて、聞きたくない、もう無理です。


 幸せの絶頂から、まさに急降下……、どうする俺。

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