間章 直美のさびしさと男二人、ピッツア店にて


 直美たちは漁師から渡された古い網や桃の木を使い、『子どもの転落・死亡事故防止トランポリン』を作っていた。青いペンキを塗った網の下に、毛布やタオルを敷く。

 「あとは強度…」17歳でマラソン部のレオナルドがハンマーで桃の木をコンコンとたたいていると、カーレッジの妹で紫色のドレスを着た10歳のマチルダが「寮に入ってきたら、刺してやる‼」と直美に吐き捨てて、宝石店へと入っていった。



 トランポリンを置き終えた直美はジョニーと階段に座り「パパは夜10時まで温泉小内で勤務、ママはCDの販売や『リート新聞』作りで多忙。さびしかった」

 涙を拭い吐露するとジョニーに抱きしめられ、活力が湧いてくるのを感じた。


 「僕もママが死んだ後、さびしかった。ママはハグで不安やトラウマを活力に変えたよ」破顔一笑し、抹茶ソフトクリームを食べるジョニー。

 「不安はない?」「うん。ありがとう」二人は手をつなぎ、『カフェ&バー 月明かり』に入った。



 ジョブズは行きつけのピッツア店で黒オリーブとトマトのピッツアを食べ、死別した妻・アンについて亮介に話す。

 「アンはコッツウォルズの生まれで、列車旅で交際し結婚した。読書好きで、栞を愛読書に入れていたが、ジョニーが8歳の時にコロナにかかって死んでしまった」絶句する亮介の皿から、ピッツアが床に落ちた。



 「横浜で、観覧車に乗った時の写真だ」背中まである茶髪に緑色の目を持つイギリス人女性が、ジョニーとジョブズの肩に手を置きながら写っている。写真を見ていたジョブズの目から涙があふれ出た。

 

 

 「4週間何もする気が起きず、ゴルバチョフやジュード先生たちと『ブレイキン』に参加後、活力が湧いた。アンは洗濯物を干すのと昼食のサンドウィッチ作りが上手だったと痛感している」

 ジョブズはトマトとチーズ入りのピッツアを食べ終え、「亮介。美月さんと直美に、多幸を」と小声で言い、店主の50代女性に札3枚を渡してからアンの墓へ向かった。



 ホテルに戻り、本を読んでいると直美がソファーに座って窓の外を見ていた。「直美。さびしかったか」「うん」亮介は愛娘の髪をくしゃくしゃとなで、「ごめんな」と謝る。

 美月も直美を抱きしめ「トランポリン、完成したね」と話しかける。「うん。森子の案で作った」満面の笑みを見せる直美。



 2階建ての家の窓から5歳と1歳の兄妹が転落、トランポリンの上に着地するのが見えた。(50代の母親と交際相手で34歳の男はデンキウナギ・マーブの電流で失神し、逮捕された)。

 18歳の木綿誠が兄妹に駆け寄り、『剛』『結』と名付けた。「強い男になれよ、剛」「結。たくさんの人とつながるんだぞ」「うん!」


 

 直美は剛や結、アレックスたちと木でできた列車の模型を広場で走らせた。






 



 


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る