予兆

超時空伝説研究所

縁起悪いな

「うわっ、水加減失敗した!」


 朝食時間に合わせてセットした炊飯器。炊きあがったご飯はおかゆのようだった。


「あぁ~、ぐちゃぐちゃ・・・・・・!」


 ヒロシは仕方なく、茶碗に掬い取りスプーンで食べた。


「病人みたいだなぁ。これじゃあ元気が出ないよ」


 アパートを出ると、外は雨だった。


「何だよ。天気予報外れじゃん?」


 傘を広げながら空を見上げ、道路に一歩踏み出すと、びしゃっと音がした。


「えっ? 何これ?」


 前の道路で水道管が破裂したらしい。水たまりにもろに踏み込んでしまった。


「冷たいっ! 何だよ~。靴の中ぐちゃぐちゃ・・・・・・!」


 戻って靴を履き替える時間はない。


「もう~! ついてないなぁ。朝から縁起悪いことばっかり」


 歩き出したところで、エリから電話がかかって来た。


「もしもし、俺だけど、どうかした?」

「ごめん。私たち別れよう」

「えっ? どうしたの、急に?」

「とにかく、もう無理なの! さようなら!」

「ちょっと待って……! 切れちゃった。何だよこれ~!」


 スマホの画面を見つめて、ヒロシは叫んだ。


「もう、頭の中がぐちゃぐちゃ・・・・・・!」


 キーーーッ! ガシャン!


 振り向くと、交差点で2台の車が正面衝突している。


「えっ? 大事故じゃん。2台とも運転席までつぶれてるよ? 助けに行かなき……」


 走り出そうとしたヒロシは、ぴたりと足を止めた。


「今までのことはこの事故の予兆だった? 朝からみんな『ぐちゃぐちゃ・・・・・・』だった。あそこに行ったらドライバーがぐちゃぐちゃ・・・・・・に……」


 ヒロシは真っ青になり、現場から逃げ出した。


「こ、これで良いんだ。これであれを見ないで済む」


 ヒロシはほっと溜息をついた。


 ◆◆◆


 警察の現場検証が続いていた。


「しかし、ひどい状態ですね。人相も判別できない」

「幸い身分証明書を携帯していたので、被害者の身元が判明した」

「吉田ヒロシ……? 住所はこの近所ですね」


 落ちてきた鉄骨の下敷きになりヒロシはぐちゃぐちゃ・・・・・・につぶされていた。

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