誘惑? (瑠奈視点)

 ……私、れーなに誘惑された!? な、なんで!? い、いや、落ち着いて考えるんだ私。自分で言ってて悲しい気分になるけど、れーなは私の事を恋愛的には好きじゃない。だから誘惑なんてされる訳……あれが誘惑じゃなかったらなんなの!?

 だめ、どう考えてもそれ以外に考えられない。……も、もしかしてそういう趣味って可能性も……だ、大丈夫。もしそうでも、私はどんなれーなでも好きだから。

 でも、趣味なんかじゃなくて、ほ、ほんとに誘惑だった場合は、むしろそういうことしない方が失礼……なはず。


 そう思いつつ、私は体を洗い終えた。


「れーな、終わったよ」

「……じゃあ、私はもう出るから」

「え?」

「何?」

「……一緒に入らないの?」

「狭いでしょ。体当たるし」


 今更何言ってるの? さっきれーなから、む、胸を当ててきて、私を誘惑してきたんだから、私はともかく、れーなは大丈夫でしょ。


「出るね」

「え、あっ」


 私が止める間もなく、れーなは出て行ってしまった。

 ……まだ、れーなの胸の感触が残ってる。こんなことされて、何もさせてくれずに出ていくって、私の事嫌いなの? れーな。

 ……もしかしてれーなは、私に性欲がないと思ってる? ……それとも、まさか無意識? さ、流石にそれは無い……とも言いきれないかも。れーなって、なんか危機感が無さすぎるし。


 私は体が冷える前に、お風呂に入った。


 誘惑なのか、無意識なのか、分からない。

 ……私にだって我慢の限界はある。だから、さっき当ててきたのが誘惑目的だったらいいんだけど、そうじゃなくて、このまま発散しないと一緒のベッドに入ったりしたら、我慢できなくてれーなに嫌われちゃう。


「れーな、もう、居ない?」


 返事は帰ってこない。

 もう近くには居ないってことだ。……だったら、ちょっとくらい声を上げても、大丈夫なはず。

 私は、さっきのれーなの胸の感触を思い出しながら、下の方に手を伸ばした。







 お風呂を上がり、髪を乾かしてリビングに行くと、まだ少し髪が濡れているれーながソファに座って、お母さんと話していた。


「れーな、何話してたの?」

「……瑠奈と仲がいいって話」

「一緒にお風呂に入るくらい仲良しで、私は嬉しいわよ〜」


 お母さんがキッチンの方からそう言いながら、ご飯を持ってきた。

 

「美味しそうです」


 れーながそう言う。

 ……どれに対して言ったんだろ。私が作ったやつかな。

 

 そう考えながら、私はソファから移動したれーなの隣に座った。

 ……ラフな格好のれーなも可愛い。

 

「何?」


 私がそう思いながられーなの方を見ていると、そう声をかけられた。


「……可愛いと思って」


 れーなが嫌がると思って、お母さんに聞こえないように、れーなの耳元でそう言った。

 すると、少しビクッとして「そう」と返してきた。

 ……れーなって耳弱かったりするのかな。


「いただきます」

「私も、いただきます」


 れーなの耳のことは一旦置いといて、私たちはご飯を食べ始めた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る