もういい気がしてきた

 ……なんか、普通に見られるよりよっぽど恥ずかしいことをした気がしてきたんだけど。

 

 私はもうタオルを適当に体に巻いた。……ちゃんと隠せてるのか不安だけど、見られるより恥ずかしいことをしたせいか、もういいやって思ってしまっている。……やっぱり見られるのは嫌だから、ちゃんと鏡で確認した。

 案外簡単に出来た。……出来ないっていう先入観があったからさっきは苦戦しただけで、普通にやれば出来た。

 まぁ、当たり前か。普通に考えたらタオルを体に巻くことも出来ないなんて、流石におかしいよね。それだけ緊張してたってことか。


「瑠奈、もういいよ」


 そう言っても、瑠奈はなかなかこっちを向こうとしない。


「瑠奈?」

「……うん」

「もういいんだけど」

「……うん」


 ……どうしよう。瑠奈がボーッとした様子で壊れたカセットテープみたいになってるんだけど。

 私のせいなんだけど、お湯もかけずにずっと居たから、瑠奈が風邪をひいてしまう。


 私は片手でタオルを抑えながら、もう片方の手で瑠奈を移動させようとしたんだけど……これ、どこを触って動かせばいいんだろ。……触れない。

 

「瑠奈、風邪ひくから」

「……うん」

「……瑠奈、これかけるから」


 瑠奈に触れる勇気のなかった私はそう言って、瑠奈の肩からお風呂のお湯をかけた。


「え、あっ、れーな!?」

「風邪、ひく」

「う、うん。あ、ありがと」

「……私も、瑠奈の頭洗う。だから、座って」

「う、うん」


 ……瑠奈に座って貰ったわいいんだけど、どうやって洗うの? これ。……普通に両手使ったら、タオルが落ちるんだけど。

 さっきの瑠奈はどうやって洗ってくれたんだろ。……両手使ってたよね。


 瑠奈の背中にくっつき、タオルを押し付けるようにしたら大丈夫かな……でもそれじゃあ、私の胸も当たっちゃって、私が痴女みたいになってしまう? あれ、さっき似たようなことしちゃったし、今更だったりする?

 なんかそう考えると別にもういい気がしてきた。なんならさっきよりマシでしょ。だってタオルを挟むんだから、服越しにするのと変わらないはず。……それだったらこの前私の家に瑠奈が泊まった時に、抱きつかれた時とかノーブラの状況で私に当たってたし。

 ……こう考えるとほんとに大丈夫な気がしてきた。よし。


「れ、れーな!?」


 タオルが落ちないように、瑠奈の背中に押し当てるようにすると、瑠奈はそんな声を上げた。

 さっきからこんな声を上げさせてばかりだな。……謝った方がいいかな。……あ、でも一緒に入ろうって誘ってきたのは瑠奈だし、自業自得かな。……やっぱり私の感覚がちょっとおかしいんだと思う。

 まぁ、いいや。


「瑠奈、痛くない?」

「い、痛くはない、けど……あ、当たってる……から」

「当ててる」


 そう言うと、ただでさえ赤くなっていた瑠奈の顔が、耳の先まで真っ赤に染まっていくのが、鏡越しにわかった。

 

 こうやって瑠奈の背中にくっつかないと、タオルが落ちちゃうんだよ。



 

「瑠奈、シャワーかけるよ」

「……う、うん」


 私はタオルが落ちないように片手で抑えながら、瑠奈から離れ、シャワーで瑠奈の頭を洗い流した。

 

「瑠奈の方向かないように、先お風呂入っとくね」

「わ、分かった」


 瑠奈の返事を聞いてから、私はお風呂に浸かった。

 ……やっぱり、二人で入るには狭いよね。

 瑠奈が入る頃には、上がったらいいか。

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