第5話 チートの無駄遣い
翌朝、目が覚めると、生まれた姿のままの優奈が俺の腕に抱きつきながら寝ていた。柔らかなお胸に俺の左腕は挟まれ、幸せだ。
なんて言っている俺も優奈と同じ格好をしている。
昨日は沢山キスしたし、今の優奈は魔力満タンのはずだ。これで、魔力を気にせず、過ごせると言うものだ。
それにしても、昨日優奈は『愛の力』がどうたらと言って、部屋の外には声が漏れないと言っていたが、本当だろうか? 今更、気にしても遅いけど。
取り敢えず、このままお胸に挟まれているのもいいが、そろそろ剥がして着替えよう。
「って、抱き着く力強っ!?」
本当に寝ているのかと怪しみたくなるぐらい、抱き着く力が強く、なかなか剥がせなかった。
「んぅぅぅ〜……あきくん、おはよ〜♡」
「おはようさん。ちょうどいいときに起きてくれた。着替えたいから、離してくれない?」
「んー……嫌っ。もうちょっとだけこのままでいたい。ダメ?」
「くっ、その顔はズルい。はぁー、ちょっとだけだぞ」
「やった!」
寝起きの上目遣いは、誰だって許してしまうだろ。
「ジィー」
「なんだ?」
こちらをジィーと見つめてくる優奈。もしかして、またキスをしろと言うのか。
「昨日、なんで出してくれなかったの?」
「出す?」
「うん、あきくんの精○」
「物語始まって早々にぶっ込んでくるなよ。読者もビックリだよ。いやいや、出したじゃん」
「うん、出したよ……外にね」
あー、そういうことか。優奈の言っている意味がようやく理解った。
昨日、イチャイチャラブラブとしていて、俺は精え……白濁液を出した。しかし、それは優奈のナカではなく、外だ。
つまり、優奈は、なぜ昨日ナカに出さなかったのかと言っているわけだ。
「いや、ほら、デキたら……」
「私は別にデキてもいい。なんなら、デキてほしいよ? あきくんは、嫌なの?」
「嫌じゃないよ。元の世界ならまだしも、今は異世界だし。異世界のこと何も分かっていない状態で、その無責任に出すのはどうかなって、男して」
「あきくん……そっか、ごめんね。そこまで、私達のことを考えていてくれたのに、私ったら、あきくんを疑っちゃうなんて。彼女失格だね」
「別にそこまで、落ち込まなくても」
「あきくんにお詫びしなきゃ、何かしてほしいことある?」
「いや、だから、別にそこまで」
「ううん、やらせて。じゃなきゃ、私の気が収まらないの」
こうなったら、何を言っても優奈が引かないことは分かっている。
だが、今は、別にしてほしいことなんてない。と言うより、別に今回に限らず、優奈は何時でもしてほしいことをしてくれる。
『何時でも、何処でも、何でもしてあげるからね♡』
優奈の口癖みたいなものだ。路地裏に連れ込み、スカートを捲れと言えば捲るだろうし、死角になる場所で露出みたいなことも言えばするだろう。
だから、言っていることは普段と対して変わらない。だから、その分、してほしいことが見つからない。
だが、だがしかし、だ! そのまま素直にしてほしいことはないと言えば――
「……やっぱり、あきくんはこんなすぐに大好きでたまらない彼氏を疑う彼女なんていらないよね。ごめんね……消えるよ」
という、展開になる。あくまで、今の“お詫び”という状況下での話だが。普段は「そっか」で終わる。
さて、どうするか。別に、悩まずとも、エロいことをしてほしければ、それを言えばいい。
エロいことに限らず、マッサージでも、膝枕でも、ハグでもいいわけだ。
皆からすれば、こんな文字通り何でもしてくれるなら、迷わずエロいこと一択だろと思うかも知れないが、普段からそういうことをしていると、何の特別感も無くなるものだ。おっと、勘違いしないでくれよ? 別に、普段からそのような行為をシているわけではありませんよ?
おふざけはこの辺にしておいて、本当にどうしよう。
エロいことをしてもらうにも、今、賢者タイムに近い状態だから、あまり乗り気がしないんだよ。
マッサージも別にいいし、膝枕も今はいいし、ハグもなんか違う。
「あ、そうだ!」
「何か思いついた?」
「うん」
「なになに!」
俺が、今、優奈に求めることは――
「昨日言っていた『愛の力』というもののカラクリを教えてくれ」
「そんなことでいいの?」
「それがいい。ずっと気になっていたんだよ」
やはり、このカラクリを知りたい。この宿の部屋の壁は、防音でも無ければ、厚いわけでもなさそうだ。だから、昨日の優奈の声なんて外まで聞こえていてもおかしくない。いや、別に、そこまで優奈の声が大きいってわけではないが、この部屋だと声が漏れそうっていう話だ。
「それぐらいなら、別に今回じゃなくても教えてあげるのに」
「何でもいいなら、別にいいだろ」
「もう、あきくんは遠慮しだな。もう少し強欲でもいいのに。わかった、教えてあげるね」
昨日聞いて、素直に教えてくれず、愛の力って言ったのはどこのどいつだよ。まあ、教えてくれるなら、別にいいけどさ。
「簡単だよ、また新しい魔術を創ったの」
「そうだったのか。どんな魔術なんだ?」
「ラブルームだよ」
「……それ、規制に引っ掛からない?」
「規制? 大丈夫だよ? よく、分かんないけど」
「まあ、いいや。それで、そのラブルーム? って、どんな魔術なんだ?」
「私が許した人しか中に入れなくて、音が漏れなくて、外からの攻撃も防げるよ」
「結界みたいなものか。それにしても、また、とんでもチート魔術を創ったな」
「へへ、これなら、声の心配もなくなるかなって。もうちょっと改良したら、マジックミラーみたいなこともできそうなんだけど、魔力が足りなくてできなかったの。だから、また今度試してみるね」
「お、おう、そうか」
声も聞こえない、姿も見えない、中にも入れない、攻撃も防ぐ――この世界のバランスを崩しそうなチートだな。
滅茶苦茶戦い向けの魔術だけど、きっと、優奈にそんなつもりはないんだろうな。声が漏れなければよくて、他はついでか、創って勝手に付いた機能ぐらいにしか思ってなそうだ。
「それは声が漏れない仕組みで、人がいないってわかったのは?」
「ラブアイだよ。入ったときに、一応調べたの。じゃあ、あの姉弟の子と私たちしかいなかったの」
「全然知らなかった」
ラブアイって、そんな機能もあったんだ。アイテムを調べるだけじゃなかったんだ。人を探す感知機能もあったとは。
いや、一つの魔術にどれも効果ありすぎだろっ!?
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