慟哭は無色透明

一初ゆずこ

短歌&ショートエッセイ

慟哭どうこくは無色透明』


テディベア真心こめたプレゼントきっと嘘だと予感していた


君を知るためのうつわになってくれ掘り返さないタイムカプセル


隻眼せきがんの私に与えられたのはレンズの義眼ぎがんせかいを映す


六畳の手術室には君ひとり私の腹に何を入れたの


運ばれる私はリボンで着飾って受け取らないで逃げるなら今


愛されるために生まれたはずなのにスパイになった私はだあれ?


ふところ毒針どくばりピストル愛情も全て綿わたなら軽かったのに


「ありがとう大事にするね」駆け引きは始まっている硬い微笑み


新しい居場所は今度も闇だった押し入れで問うここにいる意味


泥棒を押し入れに飼うあなたにも人には言えない罪があるはず


慟哭は無色透明だとしたら来世らいせはいらない好きに言えるね



     *



 私が短歌をむのは、中学校の国語の授業で習ったときが、最初で最後になると思っていた。

 五・七・五・七・七で情景や感情を伝えることは、私にとって難しいことだった。短歌に対して「深く勉強しなければ詠めないもの」という先入観もあった気がする。

 そんな頭の硬さを変えた契機けいきは、昨年の夏に訪れた。創作を通じて交流を深めた方々と、短歌をんで同人誌の形にまとめる話が挙がったのだ。初心者でも問題ないとのことだったので、私も参加する運びとなった。

 当初は「何が分からないのか分からない」状態だったので、初心者向けの本を読んで勉強した。そして、引用された短歌の数々に触れるうちに、型にはまらない自由な表現と、歌を詠む楽しさを知っていった。

 夏が終わり、無事に短歌を寄稿できたあとも、歌集を読む習慣は残った。他者の世界の見つめ方が、三十一文字の中に凝縮ぎょうしゅくされている。私が今回「ぬいぐるみ」のお題で詠んだ十一首も、お題の詠み手が変われば、歌の印象も変わるはずだ。

 そんな差異さいの面白さに思いをせながら、またおりに触れて、気負わずに、五・七・五・七・七のリズムを自由に楽しんでいきたいと思う。

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