第4夜「人を終わらせる方法」

俺は人を本当に殺す方法を知っている。


包丁で刺すとか首を絞めるとかそんなモノじゃない。


なんならもっと残酷かも知れない。


それは


「暇」と「無」


を与え続ける事である、


どんな屈強な人間だって「暇」と「無」を与え続けたらたちまち気が狂って頭がおかしくなってしまうだろう。


そして今俺はまさに「暇」と「無」に殺されかけている。


限界フリーターは金なんかあるわけなく。


彼女も居ないからもっぱら天井とディープな夜を過ごしている。


妄想が具現化するくらいに妄想がお友達になり。


虚無って言うのはこうゆう感じかなと辞書を引きたくなったが面倒くさくて辞めた。


最近良く通り魔などの悲惨な事件を目にする度に見かけるいわゆる


「無敵の人」


金も無し女も友達も無し、上手くいかない仕事や毒親、恵まれない環境etc...


まさに「暇」と「無」を与えられ続けられある日


「無敵の人」となり見知らぬ人に牙を向ける。


まず皆はそんなニュースを見た時にどう思うだろうか?


「怖い」「恐ろしい」「巻き込まれた人が可哀想」「またか」


おそらくそれはテレビのニュースの向こうの人の意見で見方で、それは当たり前の話である。


だが最近俺はどうしても「無敵の人」になってしまった人の境遇が自分と重なってしまって


見る度に右の心臓と左の心を同時に掴まれ潰されるような感情で体力を使っている。


きっと彼らのたぶん少なくとも半分くらいは社会で生きようと努力した瞬間があったはずで。


好きな人が居たりして彼女が欲しいなとか結婚したいなとか思って努力した瞬間があったはずで。


でも会社では仲良く話してくれる人も居なくて仕事が上手く行かずただ怒られ


仕事帰りに半額の210円の弁当と78円のどこのメーカーかもわからない安いチューハイを買って


いつの間にか好きな人のインスタには彼氏から貰ったプレゼントの写真が載っていて


友達からのLINEなんて来ないのにLINEを開いたり閉じたりして


同世代の男女がSEXをしてるような時間に1000回くらい見た無料アダルト動画を見てオナニーをして



「暇」と「無」に食い殺され



見飽きたyoutubeを垂れ流しながら彼らは人としてあるべき心も一緒に垂れ流して



ー人である事を辞めてしまった。ー



その時に人は死ぬんだと思う。


でも中には人のまま壊れてしまって自ら命を消す選択を取ってしまう人も居て


電光掲示板に人身事故と出た時に可哀想だって思った事ある人って居ないんじゃないだろうか。迷惑だって思った事あるだろう。


なんでだろうね。


なんで不平等や理不尽に耐えられなくて死を選んだのに


人身事故の四文字でなんでその人がそうせざるを得なかったのか誰も知らないまま


この世から居なくなっても尚も迷惑だ。1人で死ねとか罵倒されているんだろうね。


電光掲示板の向こうで泣いてくれる人は何人居たんだろうか。


俺は知ってる。


彼らは無敵の人なんかじゃない。


人間界は敵だらけだったから人間で居る事を辞めてしまったんだ。


これはきっと普通に暮らしている人間にはわからないかもしれない。


でも紛れもない事実は


また明日も俺はギリギリ人で居る為に


「暇」と「無」と対峙しなければならない。


限界フリーターの夜は長くて朝は遅い。


しょうもない妄想や考え事だけ膨らんでゆく。


考えるだけじゃ人生は変わらないのに。


ああ、それにしても暇だ。











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限界フリーターくんの日常。第1章。 kaonashi @kaonashi333

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