PRESENT

大隅 スミヲ

PRESENT

 頻繁に宅配便業者が事務所へ荷物を持ってやってきていた。

「きょう何の日だっけ?」

 香坂がそんなとぼけた発言をしたため、わたしは苛立ちを隠さずに言った。

「きょうは『星見あかり』の誕生日ですよ。社長、きちんと覚えておいてください!」

「ああ、あかりの誕生日だったか。も、もちろん、覚えていたよ」

 明らかに嘘だとわかる言い方だった。本当にこの人、大丈夫だろうか。

 わたしは、怒りよりも先に呆れの方が来てしまっていた。


 星見あかり。彼女は現在飛ぶ鳥を落とす勢いのあるVtsuberであり、我が事務所の看板スターだ。

 歌を出せばミリオン、テレビCMには引っ張りだこ、色々な企業からタイアップしてほしいという依頼が来る売れっ子である。


 そんな星見あかりの誕生日である今日は、朝から宅配業者が大量のプレゼントを持ってきていた。

 プレゼントはすべて事務所で一度預かり、そこから本人に渡すという手筈になっている。もちろん、中身はすべてスタッフでチェックを行う。本当のファンからのプレゼントもあれば、アンチと呼ばれる人間からの悪意のあるプレゼントも含まれていたりするためだ。

 プレゼントは、すべてX線検査装置を通される。古い手口ではあるが、今でもカッターの刃入りのプレゼントを送ってくるような連中がいるためだ。

 案の定、カッターの刃が入った荷物がいくつかあった。


「これなんだと思いますか?」

 スタッフに呼ばれたわたしはX線装置の映像を覗き込んだ。

 それは、形はクマのぬいぐるみだった。しかし、頭の中にスマホと思わしき電子機器が入っている。

 それを見たわたしはぞっとした。

 スマホがあれば、位置情報で星見あかりの自宅がわかる。それに映像通話モードにしておけば、星見あかりの正体もわかってしまうのだ。


 恐ろしいことを考えるファンもいるものだ。

 そう思いながら、わたしはクマのぬいぐるみの頭をハンマーで叩き潰した。

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PRESENT 大隅 スミヲ @smee

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