第7話~背中を貫く爪

 開け放たれたダビの城門に向かうダンテ一行。

 まだダビが生きていたころは多くの馬車や人々の往来でにぎわっていた広い街道を4人はテクテク歩く。

「パパー、なんでこの門は空いたままになってるの?」

 大きな大きな門は4人を飲み込む口のようにも見える。

「それはな、この瘴気はパパたちには見えるけど見えない人達の方が多いんだ」

 冒険者に成れたり騎士に成れたりするものは基本的に「認識」と言うスキルを持つものだ。

 これを持つものは瘴気や魔力の基本的認識ができる。

 強いものほど自己主張が激しい、と言うこともなくスキルレベルが低ければ認識出来ないのでレベルを上げ上位スキルに進化させていくのは常識だ。

 その方法についてはまた改めて閑話で紹介しよう。

「こういうダンジョンはそう言う見えない人たちを食べちゃうためにこうして入り口を開いているんだ」

「それは危ないね。それじゃあチャッチャとダンジョンコアを壊しちゃおう」

「おー。って言いたいけど道中の敵やダンジョンコアの仔も破壊しないといけないからな」

「おー、そうだった」

 ダンジョンコアの仔とは一定以上成長したダンジョンの中に出来る新しいダンジョンコアのことである。

 仔はダンジョン内で成長して成熟すると独立して別の場所に新しいダンジョンとして繁殖するのだ。

 ダビのコアはゴットマザーの占いによれば仔が四つあるらしい。

 そして仔にはそれを守護する強力なボスがいるはずだ。

「と言う訳で気を抜かないように行くぞ」

「おーーーー」

 そう言いながら4人が門をくぐると。


 ブュゥン。


 と、膜を通り抜けたような、何かがずれたような感覚を4人は感じた。

 陽気に満ちた朝の爽やかな光が急に生ぬるい粘着質のある紫色の空気に変わったのである。

 そして見えていた街の様子もがらりと変わてしまう。

 綺麗に舗装されていた石畳の道はあちこちがめくれあがっていて土がむき出しになっていた。

 白かった家々の壁も穴が開いたり腐り落ちていたりする。

 カラフルに咲き誇っていた花々は毒々しい粘液を垂らす植物に変わっている。

 そして何より、笑顔で手をつないでいた家族が、ジョギングしていたお爺ちゃんが、町を歩く多くの人々が――――


「あ~~~~~」


「う~~~~~」


 腐り果てた姿で徘徊していた。

 他にも空を仰げば。


 ビクン、グプン、ドプ。


「気持ち悪いね」

「だな」

「空から行ってたらあの中に埋まっていたんだ」

 空は気持ち悪い肉壁が覆っていた。

「おじさん、気持ち悪かった?」

「ワシが埋まった壁はあんなおぞましい肉の壁ではなかったが、なかなかに苦しかったのだな」

 これである。

 ダンテ達が地上を歩いてダンジョンの中に入ったのは、開いた入り口以外から中に入るとそこがどうなっているか分からないからである。

 そして、どんなダンジョンにも入り口がある。

 入り口が無ければダンジョンは成長できないからと言われ、入り口からはダンジョン内の瘴気が漏れ出しているのが普通だ。

 なので、瘴気をたどりダンジョンの入り口を見つけてそこから攻略するのがセオリーである。


「慈悲深き我等の神よ、この罪深き苦難を乗り越える為の加護を与えたまえ。幸を与えたまえ。Tの力をここに与えたまえ」

 ミルが手を組み祈りをささげるとブワッと緑色の萌える若草色の風が足元から吹き出し瘴気を吹き飛ばし、ダンテ達の体を包み込んだ。

「サンキュー、ミル。めちゃ楽になった」

「ミルママすごーい。ありがとう」

「ワシにまで加護を与えてくれて感謝するのだな」

「いえ、ほんの些細なものですがボクの力が役立つなら良かったです」

「いやいや、この天井だ。空を飛ぶのは無理そうだし、歩いての攻略に成るだろうから大いに期待してるぜ、ミル」

「はい」

 と、そういうことをやってる間に「う~」とか「あ~」とか「ほ~」とか言いながらゾンビたちが集まって来た。

「いいかクゥ、ここからは実戦だ。よく見ておけ」

「うん。分かったパパ~」


 聖紋が刻まれたミスリルの聖剣が振り下ろされる。

 ゾンビの頭がパッカーンと割れるどころか股まで裂けた。

 その後もダンテによって右に左にと剣が振るわれて、そのたびにゾンビたちの首や胴などをポンポンと飛ばしていく。

 その横で赤い髪の長身の男が短剣を手に踊っていた。

 左手に持つ短剣を振り上げれば数メートルは離れた場所に火柱が上がり、ゾンビたちを飲み込んで灰燼に変えて行く。

 横に振れば何体ものゾンビを炎に飲み込んでいく。

 この2人だけで何十体ものゾンビが屠られていく。

 しかし、中でも最強なのが。


「ホーリーバーストォォォ!」


 先端にTのシンボルマークがついた杖の先から白い弾が飛び出し――――


 カッ!


 一気に膨れ上がり百体近くのゾンビが蒸発した。


「ホーリーブラスター」


「ホーリーレーザー」


「ホーリーストーム」


 魔法が発動されるたびにドンドンゾンビが蒸発していく。

 使い手はミル。

 いつもの赤みがかった銀髪と瞳は今はプリズム色に輝いている。

 200、300と撃破スコアが表示されていたらそれはどんどん上がっているであろう無双ぷりである。

「はい。こんな風にゾンビめちゃくちゃにされまーす」

 と、剣を振る手を止めてミルのすごさをアピールするダンテ。

「わ~、ミルママすごーい」

「わ~、ミルママすごーい」

 純粋にミルを褒めるクゥと、クゥのモノマネをしながら褒めるダンテ。

 2人の称賛に周りのゾンビを一掃したミルが照れながらやてくる。

「いえいえ、ボクのはゾンビに特効があるだけでそんな」

「いいかクゥ。これが謙遜と言うやつだ」

「ミルママは謙遜すること無いよ。胸を張っていいんだよ。あまり胸ないけど」

「クゥちゃん、それどういう意味ですか。って言うか誰が教えたんですか」

「パパがね、ミルママは小っちゃいのがいいんだ。って言てた」

「ダンテさーーーーん」

 ミルは目に涙をためて真っ赤な顔で左拳を固めてダンテめがけて振りかぶった。


 ドパーーーン!


 と地面のの中から飛び出してきたゾンビの顔面に、左ストレートが炸裂して一瞬で蒸発させた。

「危ないですから気を抜かないでくださいね」

 とミルは告げる。

「おう」

 ダンテは頬をかすめた拳に冷や汗を垂らしながらそう返した。

「これならミル1人でも攻略できそうだな」

「うむ、これがギフトと言うモノなのだな」

 ダンテの言葉にレーヴァテインが感心したようにうなづく。


 そう、ミルはギフトもちである。

 これはまれに生まれてくる特別な才能を持っている者をそういうのだ。

 ミルが持つギフトは「光の奇跡」と呼ばれる神官ならば喉から手が出るほど欲しい、神の恩寵を受けることができるものである。

 これをミルはEXランクで所持している。

 それにより、ミルの職業適性においては神官がEXである。

 ぶっちゃけアンデットの天敵である。

 だからこそダンテはミルをダビ攻略にスカウトしたのであった。


「ギフト持ちだからってそんなに万能じゃないんですよ。あ、クゥちゃん、あそこに1匹隠れているので戦ってみてください」

 ミルはダンテ達の称賛に異議を唱えながらも、最後に残ったゾンビにクゥの練習相手としてけしかける。

 クゥは「ゴッドフィンガー」と叫んで、地面から光り輝く手でゾンビを引きずり出してサンドバックにし始めた。

 それを見つめながら3人は話し始める。

「ギフトは天からの授かりものです。ですはオッパイは大きくなりませんでした」

「まて。その話にワシも入らねばならぬのか?」

「入れ!オッパイの話には漢として入っておけ」

「レーヴァテイン様、オッパイ賢者としてのお知恵をお貸しください」

「誰がオッパイ賢者なのだな。こんな話は酒でも入れなければやってられんのだな」

「お?いける口か」

「ならば決定ですね」

「……」

 と、変なイベントフラグが立ったところでクゥがゾンビを昇天させた。

「クゥ、戦ってみてどうだった」

「パパと違って動きも遅いし単純だからただ殴っているだけだった」

「そうか~。なら問題はなさそうだな」

 ダンテは首の後ろを掻きながら戦闘跡を見て告げる。

「とりあえずミル戦車での一点突破でダンジョンコアまで行進な」

 そう作戦を告げるダンテにミルが食い下がる。

「だからギフトも万能ではないんですよ」

「分かってるよ。で?ここならどこまで行けそぉ」

「雑魚なら何匹沸いて来ようと問題ありません」

「強敵なら?」

「中ボス位ならさしでやれそうですが」

「なら問題ないだろう。なんたって俺達が居るんだからな」

「ダンテさん」

 信頼されてることにちょっぴり感動しているミルにダンテは、

「さぁ、ミル戦車パンツァーフォー」

「ダンテさ~~ん」

「ミルママ。パンツァーフォーだよ。

「クゥちゃんまでー」

「…………いや、ワシは言わんのだな」

「期待してません!」

 こうしてミル戦車1号によってゾンビランドダビは蹂躙されるのだった。


 ドカーン。

 ドコーン。

 バコーン。と白い爆発をあげて進むダンテ達一行を

ゾンビたちは阻止できず、ついにダンテ達は最初の目的地にたどり着いた。

 そこに待ち構えていたのは――――


 ガタガタブルブルガタブルガタガタブルガタブル。


 完全に怯え切って震える、白旗を上げる一匹のアンデット。

 ちょっと豪華な装飾品を身に着けた高い魔力を放つ個体。

 ダンテの鑑定スキルでは「デミ・リッチ」と言うらしい。

「こ、降参~~~~」

「よし、ミルやれ」

 命乞いをするデミ・リッチに対して、ダンテは容赦なく親指で首をかっ切る仕草をして討伐命令を出す。

「お、お、お、お願いします。何でもしますから」

 デミ・リッチのミイラみたいな見た目からはそうとは思えない生き生きとした若い女の子の声がした。

「ちょっと待ってくださいダンテさん。こんな怯えて命乞いをしているのにいきなり殺すのは可愛そうです」

 と、神父でありながらアンデットの味方をするミル。

「いや、でももうそいつ死んでるんだけど」

「せめて事情だけは聞いてあげてください」

 ミルは背中にデミ・リッチをかばってみせる。

「神父様。助てくださるんですか」

「はい。Tの神は迷えるすべての子羊の味方です」

「ああ。ありがとうございます神父様」

 そう言ってデミ・リッチはひざまづいて祈りのポーズをとる。

 しかし、その姿は骨と皮だけになったやせこけた顔に、パサパサの長い髪が生えていて、ボロボロの法衣に禍々しい宝石が付いた装飾品を身に着けたいる魔物である。

 それでも洞のように開いた双眸から涙を流していた。

 ミルは伸び放題でボロボロとひび割れている爪の生えたカサカサの骨ばった手を取ってデミ・リッチに語り掛ける。

「怯えないで、一つずつ何があったのか教えてください」

「はい神父様。私の名前はパフェと言います」

 デミ・リッチの少女、パフェはとつとつと語り出した。

「私はこのダビで生まれ育ち、両親の経営する料理屋で手伝いをしていました」

「パフェさんは何歳だったのですか」

「当時15歳になったばかりでした」

「そう。15歳でご両親のお店のお手伝いをしていたのでね」

「はい。私は料理が好きで小さい頃から両親に教わってお店の味を覚えようとしていました」

「ご両親のお店を継ぐつもりでしたの」

「はい。その為に頑張っていました。それはとても幸せな日々でした。……あの日までは」

「あの日――――」


「あの日から何年の年月が経ったのか分かりませんが、あの日もいつもと同じように朝が来て1日が始まろうとしていました。朝食を食べて両親とお昼営業の準備を始めようとしたときでした。急にめまいがしたかと思うと両親が苦し出して倒れてしまいました」

「パフェさんは何ともなかったのですか?」

「少し吐き気がしましたが倒れた両親が心配で外に助けを呼びに出ました。そしたら外の人達もみんな倒れていて。どうしたらいいか分からずにオロオロしていたら、地面から紫色のガスが噴き出してきて街を覆っていきました。そのガスに触れるとヒトや建物が腐っていって、私もガスを吸ってしまってこんな姿になってしまったんです」

「それでここに」

「いいえ。その後4人の化け物が現れて何かを言われて意識を失なちゃったんです。それからいくらかして私の意識は戻りましたが、最初は自由に動けなかったんですけど次第に自由に動けるようになっていっていろいろ思い出したんです」

「思い出したとは」

「私の意識が無かった時のこととか色々。私、これを守るように言われていたんです」

 そう言ってパフェは背後に浮かぶ紫色の球体を見る。

「ダンジョンコアの仔だな」

 とダンテは目を細め。

「お前はコイツの番人なんだな」

 とパフェに訊ねた。

「いえ、別に」

「————は?」

 真面目な顔をしていたダンテの顔がパフェの返答で崩れた。

「いえ、私も最初は何が何でもこれを守らなきゃいけないと思ってましたけど、いまはどうでもいーかなー、というかこれ壊しちゃってほしいと思ってます」

「ダンテさん。この娘完全に親元から独立しちゃってますね。多分ですがよっぽど精神汚染耐性が強かったんだと思います」

「みたいだな。どうする」

「そうですね。ちゃんと浄化して成仏させてあげたいですけど、パフェさんはどうしたいですか」

「私ですか?私はこんな化け物にした元凶をどうにかしてからちゃんと綺麗な魂で成仏したいです」

「と言ってますし、見逃して後で浄化でもいいですか」

「う~~~ん、まぁいいかな」

「ありがとうございます。代わりと言っては何ですが―――」


 その後、1つ目のダンジョンコアの仔を破壊してパフェと別れた。

 そしてまたミル戦車による蹂躙行進が行われて2つ目のダンジョンコアの仔の元にたどりついた。

「ハァーハハハハハハハ、よくぞここまでたどり着いた」

 そこにも中ボスたるコアの番人たるデミ・リッチがおり、パッと見パフェとあんまり変わらないが、態度が無駄に大仰であった。そして両手を広げ大きな声で笑いながらしゃべる。

「しかし残念だったな。最初の一人は我ら四天王の中でも最弱。この俺様はそぼびゅ!」

『いいですか。2人めの番人は魔法が強力で距離を取られると面倒ですが、目立ちたがりなので最初に皆さんの前で見得を切り名乗りを上げるでしょう。そこをどついてあごを砕けばただのカカシです。打撃に弱いので聖法力のかかった攻撃でズタボコにしてください』

 と言うミルの助言で開幕速攻でクゥの右ストレートが炸裂して、怯んだところを頭を両手でつかみ、あごに膝蹴りを左右交互に連続で叩き込んであごを砕く。

「オラオラオラオラオラオラオラオラ」

「ちょ、まどがっごけばびゅ―――」

「これで貴方はもう何もできない」

 あとはクゥのスパーリングサンドバックとして死ぬまで殴られた。

「パパー、終わったよ」

「こっちも終わったぞ。これで後は本体と仔が2つだな」

「どんどん行くのだな」

 と言う訳で3人目の四天王。

「なかなかやるようだな。だがここまでだ。ここには私がいるのだからな」

 そう言って3人目の四天王は手にした大鎌で前に出ていたレーヴァテインの胴を横薙ぎにした。


 ガキーーーーン!


「……はい?」

『3人目の番人は大鎌と火炎を使いこなす強敵ですけど、大鎌に自身があるのか最初は大鎌で攻めてきます。これをどうにかして弱点の水をぶっかければ一気に弱体化します。特に聖水なんかがいいでしょう」

 と言う訳で一番硬いレーヴァテインで受け止めて。

「今だミル」

「はい」

 動きが止まった3人目の番人に特製のミルの聖水(治療用)がぶっかけられた。

「ぎゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 効果は抜群で番人の体からは硫酸でもかけられたかのような白い煙が噴き出していた。

「このまま灰になるのだな」

 止めにレーヴァテインが短剣で頭から唐竹わりにして、炎で焼き尽くすという皮肉の利いた終わり方だった。

『そして最後に控える番人は最も強い人です。これといった特徴はないですけど、逆にこれと言った弱点もありません。純粋に強いです。ですので最後に据えられたボッチです。ですので皆さんで囲んでタコにすれば余裕で行けます」

「ゆくぞ……」

 と言う訳で最後の一人は、リッチと言えば魔導を極めて道を踏み外して不老不死になったアンデットになった者。その眷属たるデミ・リッチは多少の個性は出るが基本親元と同じ魔導士タイプに成る。

 しかし、このデミ・リッチは襤褸を着たミイラみたいな姿でありながら背筋は伸び、かくしゃくとした姿勢で大剣を背負った明らかに剣士タイプの偉丈夫であった。

 その纏う闘気は本物であり、これまでの番人たちとは格が違うことが分かった。

 最後の番人は言葉少なく剣を構え、真っすぐと突っ込んできた。

 だから――――


「セイクリッド・ジャッジメント」


 初っ端からミルの最大火力の必殺技をお見舞いした。

「ば……馬鹿なあああああああああああああああああああ!」

 わずかに耐えた四天王最強だが、すぐに押し負け白い光の濁流にのまれて叫び声を一つ残して蒸発した。

「ふっ、あっけなかったな」

 とダンテ。レーヴァテインは。

「戦力の分散は愚策と相場が決まっているのだな」

 と男2人が決め顔で語っている。

「パパ、ほとんどミルママのおかげだよ」

「だよね。本当にミル1人で攻略できたんじゃないか」

 と、クゥの指摘に出番が全然なかったダンテは首の後ろを掻きながらつぶやく。

「いえいえ、皆さんがいたからこそですよ。ボク1人だとMP回復の守りが出来ず、接近されては対処できませんから」

 と謙遜するミルの背後でゾンビが地面から飛び出してきてミルに抱き着こうとするが、ミルの裏拳一発で蒸発させられていた。

 行動に説得力がねぇ~~。

 と言うのがダンテの感想だった。

「まぁ、残るは元凶のリッチのみだ。この4人なら楽勝だろう」

「パパー、それフラグだよ」

「うぐぅ、気を付けます」

 そうして4つのダンジョンコアの仔を破壊したダンテ一行はダビの街の中心にそびえるバカナ伯爵の屋敷へと向かった。

 道中、地面に隠れている地雷ゾンビを一匹一匹丹念にミルが踏み潰して行ったが、順調な行程だった。

 そして屋敷の前にたどりついた4人。

「いよいよですね」

 と言うミルの緊張の面持ちで。

 レーヴァテインは沈黙を持って頷き。

「パパー、ここで頑張らないと見せ場がないよー」

「分かってるぞー。パパの活躍を見ておけよー」

「頑張れパパー」

 ダンテはクゥにはやし立てられ前に出る。

 クゥはピョンピョン跳ねまわりながらダンテの後ろをついていく。

 ニヤリ。と口が裂けそうな笑みをそいつが浮かべたのに気が付いたものは居なかった。


 ドンッ!


 と、意外と大きな音がダンテの体から出た。

 ダンテが見下ろすと白い肌に赤い鱗と爪が生えた手が胸から飛び出していた。

「「…………」」

 2人がその凶行に驚いている。

 ドクン。ビクン。ドクン。

 と、その手の中には赤黒い肉の塊が掴まれていた。

 ダンテが振り向くと。

「……クゥ?」

 凶悪な笑みを浮かべた顔がそこにあった。

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