夏休みの宿題

田村隆

夏休みの宿題

僕は、作文が嫌いだ。

 特に、作文の中でも読書感想文が嫌いだ。

 どこが、嫌いかと言われると簡単に言うことができるくらいだ。

 まず1つめは、読書感想文を書くために読む本が嫌いだ。

 僕は、基本読書は嫌いではない。しかし、感想文推奨本と言われる本は、とにかくおもしろくないので読む気にさせてくれない。

 そのうえ、文章が硬くて読みづらいし物語も暗く読者を陰鬱な気持ちにさせる。そんな本を読み始めても数行で眠たくなってしまう。

 そんな本を読んで感想を書けと言うのだから難行苦行レベルの行為だ。

 だから、僕は漫画やラノベで読書感想文を書かせて欲しいといつも考えている。

 2つめは、読書後の感想を書けということだ。本を読んだ後、感じることは面白いか面白くないかの2択だと僕は考える。

 それを、読めない小説をどのように面白いかとかどこが共感できるかなどを延々と原稿用紙2~3枚分書くなど難しすぎる。

 特に、面白くない本でそのようなことを書くことなどできるはずもない。

 しかもこれが書こうが書かないでおこうが自由ならともかく夏休みの宿題という義務なのだからたまらない。

 しかも、夏休みの最終日で明日から学校だから逃げる理由にもいかないのが憎らしくてしかたがない。

 まず、本を読もうと面白くないので本を開くが文字が頭に入ってこない。だが、本を読まないと感想は書けない。

(後ろのあとがきを読んで内容を知るべきか?それとも、小説の題名とあらすじについて検索をかけて内容を知って読んだふりをして書こうか)

(いや、小説の感想文の検索をかけてあったら、自分なりの文章に変えて提出ししょうか?)

(これって、著作権にふれやしないか?)

(いや、しょせん学校の宿題だしそんなことは関係ないだろうか?)

と堂々巡りで考え込んでいると父が僕のそばに来た。

「読書感想文進んでいるか?それより、まだ小説も読んでないだろう…………」

 父は、僕の自由研究を代筆で疲れた顔で覗き込んできた。

「まだ1行も書いていないじゃないか……」

「もうすぐ、書くつもりだよ。向こうへ行ってくれないかなぁ」

と憎まれ口をたたくが一向に文章が浮かばない。僕は本を机の外に投げ出して頭を抱えた。


「なんだ?これは」

僕の文章を読みながら父は言った。

「これは、感想文に対する感想と書く過程を書いた作文だよ。」

「これを感想文の代わりに出そうかと思っているだけど?なかなか面白いし名案だと思わない?」

「ところでこれ感想文と言えるか?それより、感想文推奨本に対する罵詈雑言を書いた方が面白いぞ“!!私もあの本は作家として一言言ってやりたかったのだ。手伝ってやる」

 僕は父を止めた。

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