義実家と絶縁した理由

ゆきまる書房

第1話 娘を守るためには仕方なかった

 娘の誕生祝いに、義両親から熊のぬいぐるみをプレゼントされた。娘の出生時の体重と同じ重さらしい。嫁の私にも親切にしてくれる義両親からの贈り物を喜ばない理由はなかった。

 退院した後、娘をあやすためにその熊のぬいぐるみを使うことがあった。不思議そうにぬいぐるみを眺めることが多かった娘だが、しばらくしてぬいぐるみに触れたり、ぬいぐるみの手や足を口に咥えるようになり、どうやら気に入ったようだ。娘がぬいぐるみで遊ぶ姿を私と夫は微笑ましく思っていた。

 しかし、娘の誕生から一年が経つ頃、娘に異変が起きた。娘の体のあちこちに、怪我をした覚えはないはずなのに瘡蓋ができたのだ。しかも、その数は日に日に増えていく。病院に行っても原因は分からず、精神的に参った私は娘と一緒に家にこもるようになった。

 そんなある日、仕事から帰ってきた夫に娘と一緒に神社に連れて行かれた。物々しい様子の神主に出迎えられ、訳も分からないままお祓いの儀式を受けた。夫に事情を聞いても、何も話してくれなかった。その翌日から、ぬいぐるみを家で見なくなった。

 それからというもの、娘の瘡蓋はあっという間に消え、すっかり元気を取り戻した娘を見て私も外に出るようになった。その代わり、夫から義両親と会わないように言われた。義両親の連絡先を消すようにとも。鬼気迫る夫の様子に、断ることができなかった。

 ここからは人づてに聞いた話だが、私と娘がお祓いを受けた後、義両親の近所の人たちは義両親を見かけることが減ったらしい。その代わり、義両親の家からは連日何者かの怒号と何かが壊れる音、義両親の悲鳴が聞こえるそうだ。近所の人たちは気味悪がって、義両親の家を訪ねないらしい。

 私はあることを思い出した。あの熊のぬいぐるみは、日を追うごとに重くなっていたこと。まるで娘と共に成長するかのように。義両親と連絡を取るつもりは毛頭ない。

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