幼い「わたし」の目を通して語られる、素晴らしいホラー作品

こちらの作品のタイトルは、『わたしとおかあさんとぬいぐるみ、ときどきおとうさん』。これだけ見ると、「ほんわかとした家族の物語なのかなあ」と思うかもしれませんが、作品のジャンルを確認してみると、「ホラー」なんです。
ホラーだとわかるだけで、このタイトルが少し怖いものに見えてきてしまうので、何だか不思議ですね。

主人公の「わたし」が、おかあさんにぬいぐるみをプレゼントされるところから、この物語は始まります。以前妹が欲しいとおかあさんに伝えたことがある「わたし」は、妹の代わりにぬいぐるみを贈られたのかと思い、少しばかりむっとします。
「わたしだって、もうそこまで子どもじゃないから。ぬいぐるみがニンゲンと違う、って分かるもん」(本文より引用)と思いながらも、自分の言葉を覚えていてくれたであろうおかあさんに、喜びを覚えます。

ところで貴方は、どういったホラーに怖さを覚えますか? 人それぞれ答えがある思いますが、ここでは二つ、
①登場人物が狂気的な行動を取っていること
②理論的に説明できない、不可解な怪奇現象が起きていること
という怖さを挙げてみようと思います。
この二つに恐怖を感じる方は、多いのではないでしょうか。

この作品には、このどちらの怖さも含まれています。

さあ、後は貴方の目で確かめてみてください。
個人的に、最後の一文がとても怖くて秀逸でした。背筋がぞくりとなりました。
素敵なホラーをありがとうございました。