あなたがだいすきだよ

島本 葉

🐇

 聞こえてる?

 よし。

 前に話したのはいつだっけ?

 そっか、歯が生えたときか。といっても、ぽつっと白いのが見えただけだったけど。

 最近のともちゃんはね、なんと、パパと言えるようになったんだよ。

 すごくない? けどあれ、ちゃんとパパを呼んでるのかな?

 なんかね、便利に使ってるのよ。おもちゃ取って欲しいときとか、何かをして欲しい時に。合言葉かなにかと勘違いしてるんじゃないかな。


 今日はね、友達の話。

 僕も何度か会ったことがあるけど、すごく仲のいいお友達がいるんだよ。愛理あいりちゃんって言って、クラブの友達なんだ。そう。吹奏楽部。知世ともよはトランペットだって。

 で、その愛理ちゃんと喧嘩しちゃったみたい。仲間外れにしたと思われたみたいで。勘違いなのにって言ってた。

 あ、気づいた?

 そう、だから僕のお腹が濡れてるんだよ。

 


 知世ともよの就職が決まったよ!

 ファッションデザイナーって言ってたんだけど、どんな仕事かな?

 へー、そうなんだ。でも僕の耳にリボンをつけるのはどうかと思うんだよね。男の子だよ、僕。そりゃ、もうオジサンといってもいいけどさ。



 久しぶり。

 実はもうすぐ知世ともよとお別れなんだよ。

 前に話したっけ?

 付き合ってる彼がいるって。

 いっつもノロケを聞かされて、もう参ったよ。

 そう。今度彼と結婚するって。

 僕は新しい家には一緒に行かないんだよ。

 だから知世ともよのことを報告できるのもあと少しかな。



 今日、知世ともよは引っ越したよ。

 そう、僕はパパさんとお留守番。これからはオジサン二人で仲良く暮らすよ。

 うん。パパさんも元気だよ。

 ちょっと髪が白くなって、僕と同じでお腹がぽっこり出てるけどね。

 


 ねえ?

 まだ聞こえてる?

 今日知世ともよが来たよ。

 可愛い女の子を連れてたよ。


 もう行ったみたいだね。

 僕の役目もこれでおしまいかな。

 

 じゃ、バイバイ。


 

「ママ、大っきいうさぎさん!」

「これはね、ママが生まれた時にママのママが買ってくれたものなんだって」

 

 完

 

 

 

 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

あなたがだいすきだよ 島本 葉 @shimapon

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ