第11話出会いは魔術師 (7)

 マレット②


 自己紹介をした時、ミホの顔が一瞬変わったのを見逃さなかったが、気にしなかった。

「え、あっ……マレットさんって言うんですね!!よろしくお願いいたします。」

ミホが笑顔で言った。今回は笑われなかった。

「それで~、マレットさんはこれからどうするんですか?」

急に質問してくるミホ。なんかグイグイくる。ま、気にしない。

しかし、どうしたものか。人生で1番か2番目ぐらいに悩んでいる。

帰る家があるわけではないし、やりたいこともない。ただ、『目的』のために目覚めたのだ。

「あの~マレットさん?」

俺の顔を覗き込みながらミホは言った。

「もしよければ私の家に来ませんか?『ホテル』とかも決まってませんよね。」

「い、いやー。さすがにそれはダメですよ。」

いろいろとまずい、とは言わない。

「大丈夫ですよ。」

ぐいぐい来るミホ。

「でも親御さんが。」

「親はすでに亡くなっています。」

「あ、すいません。」

俺の発言のせいで、長い沈黙が流れた。

しかし、行くか迷う。俺の中の天使と悪魔が戦う。

「来てくださったら、美味しい料理作るんで。」

ミホの言葉を聞いて、俺の中の天使と悪魔が戦うのを止めた。腹が減っては戦ができないらしい。素直だ。

「わ、わかりました。お言葉に甘えます。」

俺の中で何かが折れた。

ミホは満足そうににっこりと笑った。その笑顔は、今日見た中で1番のものだった。そしてそれは、男性キラースマイルでもあった。

その後、俺はミホの後をついて行った。

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