第20話 出会う二人

 ――二時間経過。


 ****


「お、発見ー! 騎士とようやく会えましたねー?」


 声を発したのは霧彦きりひこだ。そして標的となったのは黒髪の青年――


 二人は睨み合いながら、互いの距離を測る。


「そっちはなんの騎士なんですかねー? あ、オレは……モルドレッドです、よ!」


 霧彦が動く。クラレントを両手に持ち、黒髪の青年に向かって行く。それを受けて青年もアロンダイトを手にし、霧彦の剣を受け止めた。


「へぇー? けっこう強そうですね、アンタ。これはりがいがありそうですね! っと!」


 切っ先が青年に向かって行く。それをいなすと、彼が反撃に出る。


「なんか言ったらどうなんですー?」


 そう問われた青年は、静かに口を開いた。


「そうだな。君はなんのために、この戦いに参加してるのかな?」


「え~オレ? そうですね……目的はありますけどーかなぁ?」


 霧彦の言葉に、青年は眉をひそめる。


「随分と含んでいるな? これは……どうなんだろうね?」


 一人呟くと、霧彦の攻撃を受け止めつつ自身の魔女、リーレに小声で話しかける。


「この状況はいかがなものだろうか?」


『非常に。可能な限り――逃げて頂きたいですね』


「承知した」


 リーレの言葉に小さく答えると、彼はアロンダイトを勢いよく地面に向かって振り下ろし、その勢いで宙を舞う。

 そして、そのままの勢いでリーレに向かって声をかけた。


「リーレ。空中移動のを頼むよ」


『はい、ランスロット様』


 リーレの魔法が発動し、黒髪の青年は空を猛スピードで駆けていく。その姿を見て呆気にとられ、動きが止まった霧彦に対してモルガンが語りかける。


『モルドレッド? 呆けている場合ではありませんよ。どうするのです?』


 問われて我に返った霧彦は、しばらく思案した後口を開いた。


「うーん、と。とりあえず殺し損ねたのは残念でしたねー。でもまぁ、どうせ? いつかはぶつかるんですし? 焦ることはないでしょー? というわけで……次の獲物探しと行きますかねー?」


『いいでしょう、モルドレッド。あなたの補佐がワタシの役目なのですから』


 そうして、一人と魔女は獲物を求めてその場を後にすることとした。


(それにしても……リーレ、ねぇ。もし、この戦いの目的がだとしたら――アイツは多分ランスロットだな。と――したら。厄介すぎるかな?)

 

 思考を巡らせ、あの黒髪の青年は後回しとすることに決めた霧彦は、次なる獲物に当たりをつけることにした。


(オレとトリスタンとの戦いを見ていた二人にするか……まだ会っていない奴にするか――さぁて、どちらにしようかな?)


 その表情はいたく楽しげで、そして――どこか狂気が感じられるものだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る