第2話 どういうことだ?

 とりあえず、ペンダントを首から外そうと考えた景梧けいごだったが、すぐにやめた。

 なにやら嫌な予感がしたのだ。勘が良い方と自認している景梧はその勘に、従うことにした。

 

「モノロエ……だったな? まず、ここは日本か? あと戦うにせよ、服がねぇとはじまらねぇんだが? それと、この戦いとかいうのに参加して俺になんのメリットがある? 大金でも出してくれんのか?」


『ここは日本です。着る物もご用意してあります。そして大金も、名誉も、なんでも願いは果たされるでしょう』


「ほう? 大金出してくれんのか? はっ! こいつはお笑い草だな。んな言葉、信じろってか?」


 鼻で笑いながら言う景梧に対し、モノロエが静かに尋ねる。


『あなたはアーサー王……いえ、?』


 その言葉に景梧の表情が一瞬にして変わる。


「……どういう、ことだ? 朝春あさはるのことを言ってんなら……」


『ケイ卿、もう戦い開始まで時間がありません。お着替えなされてはいかがでしょうか?』


 話を強引に切り替えられた景梧は、苛立ちながらもモノロエの指示通り着替えることにした。

 なにせ相手が何者で、なんの目的かもわからない上に、情報が少なすぎる。

 誰かの悪ふざけならばとも考えていたが、ペンダントが喋り、アナウンスが入り……亡き弟のことまで持ち出されている。個人情報を握られている可能性が高い。

 ならば、ここは素直に従い……情報を得るのが賢明だろうと判断したのだ。


「……思ったより、軽いな甲冑ってのは」


 赤い襟首までの髪をかきあげながら、姿見の前で自身の恰好を見つめる。今の彼は、黒基調の西洋風の甲冑に、赤いマントを着けている。まるで、ゲームかマンガの世界に入り込んだような恰好に思わず苦笑いがこぼれる。


『これは、あなた用にカスタマイズされた特注品です。なので、史実の物よりも軽量化と可動域の広さが改善されています』


「なるほど。つまり、偽物ってことかよ……はぁまあいい。んで、武器はどこにあんだ?」


 景梧の疑問に、モノロエが相変わらずの口調で告げた。


、ケイ卿。ワタクシがあなたの剣であり、盾です』


「……は?」


 景梧が異を唱えようとした時だった。ペンダント――モノロエが淡く光り出し、それと同時に脳内にあるイメージが浮かんでくる。それはモノロエの使

 通常ではありえない経験に、景梧の口元が不敵に歪む。


「はっ、いいぜ。勝ちゃ金も入るしな? 乗ってやるよ――そして主催の奴をぶん殴ってやる」


 腹をくくった景梧は豪華な部屋の扉を慎重に開け、出た。

 出た先は――広く長い廊下だった。

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