第4話 VSスライム

『きたああああああああああああ!!!』

『マジでモンスターいるのか!!??』

『でも弱そうだな』

『戦闘BGM欲しい』

『デレレレン、デレレレンレン、レンレン、デレレレン、テレレーン!!』

『○んだもんに無理やり歌わせるなw』


 ……さて、俺の目の前にはネチョネチョしたモンスターが一体。どう見てもチュートリアルっぽい戦闘だが、俺は少しの恐怖を覚えていた。だって相手は得体の知れない生物なんだぞ? いきなり即死級の技を繰り出す可能性だって大いにあるし……。


「よし、やっつけちゃおっか!」


「……」


 ……でも彩花は全く恐れてないみたいだった。多分遺伝子的なアレが違うんだろうなぁ。俺ぐらい用心深い方が、絶対ダンジョン内では長生きすると思うんですけど……まぁ。この状況で逃げ出すわけにもいかないし……やるしかないか。


「じゃあ行くぞ……おらぁああっ!!」


 そして戦うことを決心した俺は、スライムに向かって大きく振りかぶり、ゴルフクラブでぶん殴ったんだ。そしたら辺りに液体がビチャっと飛び散ったが……まだ本体はヌチャヌチャと音を立てて動いているから、完全に倒した訳では無さそうだ。


「……」


「ボーっとしちゃダメだよ、類! RPGじゃないんだから!」


「ああ、そっか」


 別に俺の攻撃が終わったからと言って、相手のターンに回る訳ではない……リアルタイムバトルなんだから、俺が追い打ちかけても良いんだ! それに気づいた俺は、もう一度ゴルフクラブをフルスイングした。そしたらスライムは更に飛び散って、全く動かなくなって……したんだ。


「…………はっ?」


 この光景に俺は動揺してしまい……流石の彩花も驚きを隠せていなかったみたいだ。俺はどもりながらも指を差して、彩花に訴えかけて。


「……えっ、ちょっ、おい、見たよな、レイ!? スライムが消えたぞ!?」


「蒸発……した訳でもなさそうだね?」


 もちろんその光景はカメラにも映っていたようで、視聴者のコメント音声が一気に流れてきて……。


『えええええええええ!?』

『なんだそりゃ!?』

『そりゃ消滅するだろ』

『ダンジョンだし、何が起こっても驚かないよ』

『地球と同じ常識が通用すると思うな』

『ドロップアイテム無いの?』

『お金は落とさないのか?』


「ちょ、どうして視聴者のほうが順応してんだよ……え、ドロップアイテム? 見たところ無さそうだが……マジでどうなってんだ……」


 そして視聴者に言われてアイテムを探そうと、俺がスライムが消滅した付近に近づいてみると……。


「……ッ!?」


 突然、体温が上がった気がして。少し手が震えが出てきて……体中に力が湧き上がってくるというか、興奮状態というか……とにかく言葉に言い表せないような、初めての感覚を味わったんだ。


「……なっ、何だ……!?」


「え、どうしたの類?」


 彩花は何とも無いらしいが……ひとまず俺は簡潔に、現在の状態を彩花に伝えた。


「いや……なんか…………出そう!」


『は?』

『おい』

『エチチチチチチ』

『えッッッッ』

『えっど』

『えっどってなんですか?』

『江戸(えど)は、東京の旧称であり…………』


 江戸解説ニキをガン無視しながら、彩花は俺に聞いてくる。


「出そうって何が? ……おしっこ?」


「違うわ!!」


「じゃあ…………って類、下ネタはダメだよ!?」


 そしたら彩花も変な答えにたどり着いたのか、顔を赤らめてブンブンと首を振ってきたんだ……おい、急に女子っぽいとこ見せてくるのやめーや。俺も変な感じになるだろ。


『照れてるの可愛い』

『ナイス』

『ルイ、よくやった』

『グッジョブ』

『お前有能か?』

『やればできるじゃねーか!』


 そこ褒められても困るんだけど……。


「……んじゃなくて。手から何か放てそうなんだよ」


「え? 何かって?」


「分かんないけど……とりあえず手の震え止まらないから、やってみるぞ?」


「あ、うん……」


 あまり伝わっていない彩花のことは気にせず、俺は左手で右腕を掴んで押さえ……手のひらに神経を集中させた。そして壁に向かって……。


「はあああぁぁあッ!!」


 一気に力を開放させて、右腕を突き出したんだ。そしたら俺の手のひらからバリバリと稲妻が飛んでいって……壁にぶち当たったその雷は音を鳴らし、壁の石をえぐり取るのだった……。


「……え、えええええっ!!!???」


 その光景に彩花は今まで聞いたことのないような声を上げる。そして俺は手の痺れを感じ、自分のやってしまったことを実感しながらこう口にするのだった……。


「…………や、やべぇ。サンダー出ちゃった」


『草』

『草』

『は!!!!?????』

『うそだろ』

『雷』

『雷生える』

『だから生えねぇって』

『CGだよな……?』

『魔道士なら魔法使えて当然だな!!』

『あ、やっぱり本物だったんですね』

『こんなところまでRPしなくていいから』

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