第7話 スライムの乱獲

 《風遁・弾》は風の刃を飛ばして相手を切り裂く技だ。

 切断できるような柔らかい部位にはめっぽう強いが、スケルトンのような硬い物質にはあまり効果がない。

 いや、スケルトンに効かないのは威力が低いのもあるが。


 だが、スライム、それもくず餅状の生き物なら簡単に真っ二つにできる。

 真っ二つにした結果分裂するとかでない限り、それで倒せるだろう。


 適当に石をぶつけてスライムを釣り出し、《風遁・弾》を放つ。

 それで目論見通りにスライムは真っ二つになり……内容液をぶちまけた。


 それが良くなかったのだろう。

 周囲のスライムが気がついたようにゆっくりとこちらに向かってくる。


 遅い。

 だが水中からもどんどん上がってきていてその数は10を超えた。


 スライムを倒した地点に二三集まって来ていて、そこで何かを啜っている。

 こいつら同族食いするのかよ。


 だから……そこにむかって《風遁・弾》を連射してみた。

 面白いようにスライムが爆ぜて撒き散らされていく。


 そんな作業を繰り返して、湖から上がってくるスライムもいなくなった。

 びっちゃびちゃになった魔石やらカード類やらを拾い上げていると、湖の水面が大きく波打つ。


 ずずずず、と音を立てながら水面から巨大なスライムが出てきた。

 でかい。

 通常サイズのが抱えるサイズのクッションだとすると、このスライムはトラックぐらいある。


 うわぁ。

 マジででかい。

 さっきまで作業で倒せていたものが特大スケールで出てくるとビビる。

 しかも強さも多分比ではない。


 基本的にデカさ=強さだ。

 質量はそのまま武器になるし、その体躯を支える力は同じく武器になる。

 ステータスがあるとそれもあてにならないところはあるが、でかければそれに見合う能力が最低限存在するというところは変わらないだろう。


 つまり。

 あの巨大くず餅がもし俊敏に動けたりしたら。

 即負ける。


 扉にダッシュして逃げることも視野に入れつつ、《風遁・弾》をでかスライムに撃ち込む。

 ザン、と切れて、そこから体液を吹き出すが、ある程度吹き出したあたりで固まり始め、傷口を塞いでしまった。


 再生能力持ち……か、スライムは基本アレを持っているのか。

 一応攻撃は効きはするみたいだな。


 ならばもっと叩き込めば倒せる、そう思ったときだった。

 スライムが急にぐぐぐと小さくなったと思ったら。

 身体の一部に穴が空き、そこから体液を加速させて発射してきたのだ。


 身体をポンプのように使って発射してくるとは。

 とっさに回避……いや、攻撃はかすった。

 かすっただけでも5%ぐらいHPを持っていかれた。

 痛みもないし、酸のようなものもないようだが。


 これ、結構危ないんじゃ……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

いきなり出現ダンジョンカード どこからでもダンジョンに入れるカードでダンジョンを探索しよう! 内藤悠月 @knightyou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ