第38話 そして私は不死になった 6

 それに気づかないカーヤはナスカの手をまた引っ張り出すが、負傷しているナスカは走り出してもすぐ前のめりに倒れ込んでしまう。

「ぐあァッ⋯!!」

「ああ!?なにやってんだ!しっかり走れよ!」

 カーヤは怒鳴る。極限状態になると人は必要以上に大声を発してしまうのであろう。

「お腹⋯がァ」

 苦痛に悶えながら訴える。服に血が染み渡り、履いているズボンにまで血が流れ真っ赤になっていた。まるで最初からこのようなデザインだったのかという程、赤く染まった面積が多い。

 カーヤもそれに気づく。

「さっきの火球か!!!?」

 このままでは確実に大量出血で死に至るということはお互い分かっていた。

 海蝕洞の反対側に居たドラゴンは再度上空に飛び立たっている。

 ドラゴンの姿全体がハッキリ視認できた。イメージで言うと、赤土のような肌。そして悪魔のような翼。顔はカーヤが手に持っている子どもの顔をそのまま大きくしたものだ。

「ぉ⋯う⋯置いていって⋯」

「はあ!?」

「私はァ⋯もぅ⋯た、助からない⋯」

「バカ言ってんじゃねえ!!!!」

 意識が飛びそうなほどの激痛に耐えながら語りかけるナスカに対してカーヤは大声で怒鳴り返したが、痛みのあまりナスカの脳内にその言葉は届いていない。

 ドラゴンはまたしても口内に炎を溜める。

 その時カーヤはふと思い出した。

「なあ言い伝えだけどよ!ドラゴンの肉食ったら不死になるみたいなこと誰か言ってなかったっけ!」

 応答はない。もう意識が朦朧としているのだ。

 カーヤは子ドラゴンに噛みつき、肉を引きちぎる。

 そしてその肉を指でつまんでナスカの喉奥に無理矢理ねじ込むのだった。

 その時、上空にいるドラゴンが火球を2人めがけて吐き飛ばした。


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