第36話 そして私は不死になった 4

「ドラゴンかあ。聞いたことあるけど、何でこんな所にいるんだ?」


 カーヤはドラゴンの死骸を引っ掴んで持ち上げる。

「ちょ、ちょっと」


「小さいから赤ちゃんかな」


 怪物の正体が分かったとはいえよく触れるな、と思うナスカを差し置いて、まるで市場に置いてある野菜の品質を確かめる主婦のように全体をくまなく回して見る。


「昨日までこんなの居なかったんだけどなあ」


「アンタ毎日岩場来てたの?」


「うん」


親の言いつけを破ることは日常茶飯事だったらしいカーヤは死骸をナスカに見せる。


「触る?」


「イヤ」


そう言った直後、ナスカは動物学の学書で見た内容をふと思い出した。


────子供がいる場合は傍に親が子供を探している可能性が高いため、一刻も早くその場を離れることが望ましい。穏やかな草食動物でさえ、子供を守るためならば凶暴化して闘うというのに、それが普段から好戦的である肉食獣なら尚更だ。


「カーヤ今すぐそれ置いて逃げよう!」


なんで?というカーヤの発言に被って、海蝕洞の外から叫び声のようなものが聞こえた。


だが人間では無い。馬でもでも野犬でもホーンディアーでも、ましてやゴブリンの集団でもない。



親が来たんだ。


2人は同時に声の主が何者であるか察した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る