なじみの本屋です!

偽善者!?

第1話 本屋の娘――森野 栞。

 小説か漫画か。


 言うまでも無く俺は――


「営業妨害! 立ち読み禁止! たくさん買え! 出版不況を吹き飛ばせ!」


 幼なじみで。本屋の娘――森野 しおりが。


 お客様の俺に。むちゃくちゃな要求を言ってくる。


「ちゃんと新刊のコミック買ってやってるだろ!?

しかも、何で俺だけ注意されるんだ!?」


 高校では、それなりに大人しく。清楚せいそだと言うのに。


 こうして家の本屋を手伝うと。人格変わるの!? 


 ホラーなんだけど!?


「あらあら? 書上かきあげ よむ君? いらっしゃい!」

しおりのお姉さん――」


 ゆるふわで。全てを優しく包み込む雰囲気。


 しかも、しおりとは違う。


 大人なナイスボデェー!


「やだ! もう! こんなオバサンにお姉さんなんて! うふふふ!」

「うわ、私のを口説いてる……最低の幼なじみ」


 うつろな目で見るな!? 


 え!? 俺、刃物で刺されちゃう!?


 知り合いの本屋に来るだけで。命懸けなの!?


しおりだって。よむ君が来店して照れ隠し――」

「お、お母さん! 新刊の陳列ちんれつとか! しておいて!」


 ああ!? そんな!?


 もっと会話をしたかったのに。本屋の聖母様!


 しおりによって。無理やり引き裂かれてしまったぜ。


「も、もう! 余計な事を言って! よ、よむ? さっき言ってた事、聞こえた?」


 今度は急にしおらしい態度。


 情緒不安で心配するぞ? 仕方無い。うんうん!


「ああ! はっきりと! しおり! お前の熱い気持ちは、俺に届いてるぜ!」

「……よむ


 顔を赤らめつつ。伏し目がちなしおり


 あれ? こんなにも可愛かった? 動悸どうきまで!?


「追加購入でゲーム雑誌もだな! はははは! お得意様のよむ様だぜ!」

「……は? 何それ?」


 すっとんきょうな返答だな! 嬉しさを必死に隠してるのか?


 いやん、健気けなげしおりさん!


「だから、書店が苦境な時代で困ってるんだろ? 言ってたろ?」

殺気さっき? 何それ? 何それ何それ? それ何? あははは!」


 あ、あれえ!? ヤンデレしおりちゃんかな!?


 お、俺、変な事、言った!? 言ってないよね!?


「これからも、幼なじみが働いている本屋――馴染みの本屋をよろしくね!」

「ひえっ!? しおりさん!? 全然笑ってないけど!?」

「……だから、お母さんがアシストしてあげたのに。でも、仲良しだから。その内に――」


 今日も実家の様な安心感――修羅場な本屋さんです!?


「ちなみに、電子書籍は禁止だからね? よむは一生……私の本屋で購入するの。ふふふふ!」

「……紙の本に対する愛が重いよ!? 何この店員さん!?」 


 とは言いつつも。


 しおりが働いている時に。


 からかうのも日課になっているし。


 これからも、長い付き合いになりそうだ。


 まさに、俺にとって――馴染なじみの本屋。


 


 


 


 






 


 



 

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なじみの本屋です! 偽善者!? @suruga281

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