第5章 門出

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 12月27日金曜日の午前10時、

予定通り、

引越社のトラック2台が、

沙恵さえ二郎じろうの実家の前に停まった。


 2家族総出で、

トラックに

二郎と沙恵の全荷物を積み込み、

2人はトラックに乗り込み、

新居へ向かった。


 引っ越し先は2222号室、

22階の22号室だ。


 引っ越し業者に

全ての荷物を搬入してもらい、

清算した。



 引っ越し荷物もそのままに、

沙恵は『ららぽーと』に買い物に行こう、

と二郎を促した。


 2人は歩いて、

『ららぽーと』に行き、

ワインとワインオープナーと

ワイングラス2つと、

二郎の好きなスイーツなど、

持って帰れるぐらいの食料を購入した。


 夕食は出前を頼む予定であった。



 「とりあえず、乾杯。」

といって、

ワインを注いだグラスを2人で傾けた。


 二郎の声が、

まだ家具のおかれていない

広い室内で反響した。


 「喋っただけで、

コンサートホールで

演劇してるみたいになるね。」


 2人は笑った。


 2人の笑い声が

タワマンの一室で反響した。


 2人の『門出』

…『もんで』ではなく、

『かどで』であった。

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60億円が振り込まれた話 冨平新 @hudairashin

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