第4章 デート 第3節 賭けてみたいもの

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 二郎じろうは今まで、

感情を他人に打ち明けたり、

感情を抱いている相手に

告白したりすることが

ほとんどなかった。


 周囲の人が自分に

期待していることを読み取って、

注文通りに行い、

他人が喜ぶであろうことを

把握し理解して、

他人に喜んでもらえるように

行動することを、

最優先にしてきた。



 二郎の

沙恵さえに対する想いは

明確であった。


 表現こそしてこなかったが、

沙恵のことを心から信頼している。


 幼い頃から、なぜか、

両親にも姉にも

甘えられなかった二郎にとって、

波長が合うのだろう、

沙恵にだけは心が許せて、

甘えることができたからだ。


 二郎にとって沙恵は、

どのようなことでも話すことができる

唯一の人だったのだ。



 そして、

顔も、体つきも、

二郎の好みだった。


 二郎は奥手だが、

恋愛感情がない男ではない。

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