第4章 デート 第2節 働かない理由 


 「二郎じろう

筑波大学の医学部に現役合格するほど、

医師になりたかったんだよね。


子供の頃から夢はお医者さんで、

それ以外、考えられなかったもんね。


医者として仕事もできるのに、

どうしてボランティアをしてるの?」



 「うーん、俺は、組織とか、

集団の一員として働くことが苦手なんだ。


自分一人でやりたいようにやりたいからさ。


大学病院の医局をすすめられたんだけど、

ああいう世界って、

権威だとか名声だとかにこだわって、

患者さんを本気で治すことが

後回しになっている上司とか多そうじゃない?


そういう人の下で働くことになったら、

患者さんの命よりも、

上司の機嫌をうかがったり、

出世しようとして

うまく立ち回ったりすることに

神経使うことになるような気がするんだ。


俺はそういうの、ちょっと向いてないかな。


というより、

そういう人間になりたくないし、

そういう生き方、

そういう医療は絶対にしたくない。」



 二郎は大学病院勤めをしない理由を、

沙恵さえに明かした。


 二郎は正しい、と沙恵は思った。

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