第4章 デート 第1節 第一関門突破

5


 「いらっしゃーい。」


 アクリル板だらけの

『焼肉東大門』店内。


 いつもは厨房ちゅうぼうに入っている

太ったおばちゃんが、

明るく笑顔で声を掛けた。


 手指をアルコール消毒してから、

テーブルに座った。


 沙恵さえはタブレットを手に取って、

二郎じろうに渡した。



 「この前は、私が好きなものを

勝手に頼んだから、今日は二郎が決めて。」


 「え?」


 「私がおごるから。

遠慮しないで頼んでよ。」



 「そう言われてもな…一緒に決めない?」



 一緒に決めない?


 何て、いい響きなんだろう。


 沙恵は少しの間、

二郎のこの言葉を頭の中で反芻はんすうして酔った。

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