第4章 デート 第1節 第一関門突破

3


 沙恵さえが駅を出て15分ほど経った。


 俊足しゅんそくが、

左の大きめの道路を駆け抜けるのが見えた。


 (二郎じろうだ!)


 沙恵も傘を差しながら

慌てて飛び出し、二郎を追った。


 元陸上部の二郎は、脚が滅茶苦茶速い。

 どんどん遠くなってゆく。


 「二郎!」

 沙恵は大声で叫んだ。


 二郎はすぐに気が付き、

沙恵のいる後方を振り返った。

 「沙恵ちゃん!」



 予期せぬ笑顔だった。



 そして頬が少し赤くなった二郎の表情を、

沙恵は見逃さなかった。


 沙恵がいるところへ、

二郎は走って戻ってきてくれた。

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