第3章 使い道 


 「服部はっとりさん!」


 引っ越し専用トラックに

荷物をすべて乗せ終えた沙恵さえが、

トラックの助手席に乗り込もうとしたとき、

会社から走って出てきたのは、

若手の大迫賢おおさこけんであった。



 「ほんとに、辞めちゃうんですか?」


 「うん、今までありがとうね。

大迫さんには、

本当に良くしてもらったと思っています。

急で、勝手だとわかっているんだけれど、

どうしようもなくてね。」


 「ええっ、そんなあ。

…もう最後だから言います。

好きでした!」


 「…。」


 「僕は、服部さんのことが好きでした。

僕が入社したのは3年前だから、

後輩ですけど、ずっと憧れていて、

飲み会の時にも、2次会の後、

2人きりになりたかったけど、

一度もなれませんでしたね。

いつかは服部さんを口説いて、

付き合いたかったです。

そして、できることなら、けっこ・・・・・・。」


 引っ越し専用トラックは、走り出していた。

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