それぞれの思い

 浅田さんが土手に座っていた。まあ、浅田さんなら誰かと付き合っていても不思議じゃないな。と思いながらも彼女が見える度に気にしてしまう。

 だけど僕は、彼女の前を何度か通り過ぎたけど、結局話しかけられずに


 高城くんはあれから何度もわたしの前を通り過ぎたけど、結局話しかけることが出来なくて


 きっと無理だろうな。と、私は思う。浅田の性格からして自分から話し掛けるなんて出来ないからだ。それは私が一番知っている。それでも、もし浅田があいつに話しかけられたのなら


 たぶん上手くいってない。と、俺は希望的な予想をしている。あいつの間の悪さは誰よりも知っている。最後に迎えに行くのは俺の役目だと確信しながら、目的の橋へと向かって

 

 高城はお前の事を何とも思ってねえよ。と、俺は反芻している。あいつにとっては信じられない事かもしれないが、高城にとってお前は親友以上の者ではない。それは俺だけが知っている事だ。

 だから俺はあいつがそれだけは知ってほしくないと思いながら、タバコに火を付けて


___________雨


 わたしは雨宿りしようとカバンを頭に載せて駆け出した。走っている間、君に声をかけられなかったことをずっと後悔していて、もう自分ではどうしようもないほど盛りあがってしまっていて。

 後で咲希ちゃんに言ったら笑われるかもしれないけど、それでも


 僕は雨宿りしようと橋の下を目指して走り出した。走っている間、彼女に話しかけられなかったことをずっと後悔していて。

 別に僕はたいして目立つわけでもなく、これといった特技があるわけでもないけれど。

 後で八代に言ったら、やっぱり身の程知らずだな、って笑われるに決まっているけれど、それでも


 あ~降って来ちゃったよ。と、私は体育館へと戻る。本格的に降ってきた雨音を聞いて、あいつは傘を持っていなかった事を思い出した。

 それならそれで都合は良いか、なんて思っていたらまた顔面にボールが当たる。顧問はわざとやってんじゃないのか?


 雨が本降りになって来た。俺は傘を広げてあの橋を目指して歩く。流石にこの雨ならヤツもとっくに帰っているだろうな、と思ったら天気とは裏腹に心は少し晴れてきた。

 やっぱり無謀だから止めておけよ。面倒な事になるぞ。とお前に言ってやろう。今さら、自分以外の面倒をお前が背負う必要はない。

 傘はこれしか無い。しょうがないから入れてやるかな。と、考えるていると自然に足が速くなる


 ジュッと音がしたかのようにタバコの火が消えた。門田はそそくさと屋上から避難していた。

 さて、俺はどうするかな。高城には人の事を気にし過ぎだと言われた事があるけど、これはもう生まれ持った性分だ。

 やっぱり気になるし見に行ってみるか、と俺はタバコを携帯灰皿に入れて学校を後にする。

 きっとあいつも見に行っているのだろうし


 

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いくじなし あきかん @Gomibako

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