第2話


祖母の蓄えた食べ物と僅かながらの金銭を、半月に一度やって来る、行商人に食料へと替えて飢えを凌いだ…。


しかし、それも三ヶ月も保たずに食い詰める…。


家財や着物も行商人に売り、それも無くなると着の身着のままの絣(かすり)の着物と飢えた身体だけになる…。


雨風凌げる家はあるが、飢えと寒さで凍えて眠る…。

 

外に出ると、村の子供達に、禁忌の子と石を投げられ、大人達には、忌み嫌いの子と罵倒される…。


しかし飢えには勝てず、必死で小枝を集め、焚き木とし、村の中を歩き、軒先を叩いて、僅かばかりの食料を貰う…。


これに入れて下さいとお椀を差し出しても、禁忌の子には、これが似合いだと、わざと地面に投げた握り飯を拾って食べ、中には、焚き木を受け取り、そのまま引き戸を閉じられると言う時もあった…。


まだ、数えで10歳…生きる為に每日村人の家の扉を叩く…。


「子守、水汲み、焚き木拾い…何でもやります…」


「禁忌の子に、子守などさせられるか!帰れ帰れ!!」


それでも、貧しい農村…。


我が子まで働かせる様に人手は足りない…。


たまには仕事を貰える…。


子供の身体には、ただでさえ、きつく辛い水汲み仕事、村から、1里も離れた湧き水汲み場から、1日掛かりで水を運ぶ…。


貰える飯は、饐えた麦飯に味噌汁をかけたもの…まるで犬か猫の餌の様な物だったが、飢えたふみは、それで命を繋いだ…。


仕事が無い時は、野草を摘み、木の根を湯がいて飢えを満たす…。


着の身着のままの絣の着物と身体の汚れは、雨水を溜めた水で洗う…。


濁った水を頭から流して、頬を伝わる涙も流す…。


ふみは、数えで11歳になった…。


顔は垢で汚いが、拭けば、ますます綺麗な顔立が現れる…。


しかし、飢えが続く身体は、他の娘と比べても、貧弱で骨が浮き出て痛々しい…。


「おらは死ぬんかなぁ…」


夕暮れ時…飢えで力も入らず、布団替わりのむしろで横たわっていると、村の庄屋が現れた。


「ここで死なれたら、村の衆が見殺しにした…庄屋は鬼かと噂される…」


「このあばら家は、儂が引き取り、お前は今日から、儂の家で働き、家の離れの納戸で暮らせ…飯だけは食わせてやる…」


ふみは庄屋の言葉に従った…これで飯が食べれると…。


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