エピローグ

 目をました。何だか心地よいゆめを見ていた気がする。

 ベッドの上には、俺ともう一人の姿すがたが……

「……あ、目を覚ましましたか?シドー」

「……シアン、か」

 そうだ、思い出した。俺は数日前にシアンとむすばれ、そのままなし崩し的に一緒に住む事になったんだ。

 けど、シアンの恰好は本当に煽情的せんじょうてきだな。れてうっすらと染めた頬に、衣類を身に着けていない素肌すはだの上からくるまるように身に纏ったシーツ。シーツの隙間からはシアンの綺麗な肌と豊かなむねがちらりと見える。

 寝惚けた意識が一気に覚醒かくせいして、俺は一瞬で元気げんきになった。うん、流石にこれは少しばかり刺激しげきが強すぎる。俺の一部はもうやる気満々だし。

「ごめん、シアン」

「はい?」

「もうしばらく、付き合ってくれ」

「え、ええ?ええ~っ‼」

 そうして、もう何ラウンドになるのか。とにかく俺は再戦さいせんを開始した。

 うん、普通に何時子供が出来できてもおかしくはないな。シアンとの子供か……

 ごめんなさい。少しばかり自制じせいが利きませんでした。

 それからもう一つ……大好きです、本気であいしてます。

 ……それから数時間後、俺とシアンは慌てて学校の準備をしていた。

「ごめん、シアン!本当にごめんなさいっ!」

「言っている場合ですか?早く支度しないと本当におくれますよ!」

「ああ、本当にまない!」

 そうして、全ての準備じゅんびが終わり俺達は二人揃って外へ出た。其処には、微妙そうな表情のゼンとオトメの姿が。

 なんだろうか?何か言いたそうな、歯にモノがはさまったようなもどかしい表情をしているのは?

「えっと?二人とも?」

「……お前、朝っぱらから随分とお盛んだな?」

「……うん、隣の部屋にまであられもない声がひびいていたよ?」

 そう、二人の部屋は俺の部屋をはさんで両隣なのだ。そして、この建物は壁がとにかく薄いのである。もちろん、防音処理などほどこしていないかなり古いアパートだ。

 つまり、言ってしまうと。俺達の朝のやらかしが二人にかれていたのである。

「っ⁉」

「~~~っ‼」

 俺とシアンは、そろって声にならない声を上げた。シアンなんか、顔を真っ赤に染めて顔を両手でかくしてしまっている。

 うん、なんか色々とごめん。本当に、それしか言えないけどごめんなさい。

「まあ、でも二人がしあわせそうで良かったよ。婚約指輪まで付けちゃってまあ」

 そう言うオトメは、俺達の薬指くすりゆびにはめられた指輪を見ていた。

 うん、まあな。けど、オトメは一つだけ勘違かんちがいしている。俺達がはめているのは婚約指輪ではないぞ?どうやらゼンは気付きづいているらしい。オトメの勘違いを正す為に苦笑しながら言った。

「オトメ、それはちがうぞ?二人のそれは婚約指輪ではない」

「え?どうして……?」

「それは婚約指輪ではなく、結婚指輪だ」

「っ⁉」

 そう、俺達のはめている指輪は婚約指輪ではなく、結婚指輪だ。実際、婚姻届けはついこの前出した所だ。役所の人が呆然ぼうぜんとした表情で俺達を見ていたのは印象いんしょうに強く残っている。いや、あの表情かおは中々面白かった。

 ちなみに、俺達は四人とも大学生である。成人は既にえている。

 ……まあ、それは今は良い。

「それより、二人とも?さっさと行かないと遅刻ちこくするぞ?」

「「……あ」」

 そうして、俺達は四人揃ってその日は遅刻したのだった。結局、俺達は揃って教師から怒られる羽目はめになるのだが。それはまあ良い。

 世は事もなく、太平にして悠々ゆうゆうと過ぎてゆく。うん、俺って詩人しじん

 まあ良い。ともかくこれで俺達の物語は一先ずまくを下ろそう……

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名も亡き神殺しの英雄譚! kuro @kuro091196

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