怠惰の魔人、ベルフェゴール

第4話、すれちがう想いと神意

 次元の境界さかいを、俺達は歩いていた。前を俺が、そのうしろをシアンが歩いている。

 俺の服のすそをそっと、シアンはにぎっていた。そんな時、ふと俺は思い出したように彼女に言った。

「そう言えばシアン。お前俺以外にもあんな事をするのか?」

「はい?何がですか?」

「いや、俺に大罪サタンの因子をながし込むためにあれをしたけどさ。流石に俺以外にしてないよな?」

 もしそうなら、どうかそれはめて欲しいと思う。いくら状況が状況だったとしてもそんな真似まねだけは許容出来ない。

 シアンは可愛かわいい女の子なんだから、そういう行為は本当にきな相手にして欲しいと思う。

 けど、俺の言葉にシアンは何か思う事があったようで。握っている服の裾をぎゅっと強く握り締めた。俺の背後で、シアンが声をふるわせるのが分かる。

「シドーは、私が誰にでもあんな事をするようなひとに見えますか?」

「…………いや、見えないから分からないんだよ」

「……………………」

 あえて気付きづかないふりをする俺に、シアンはだまり込む。そんな俺に、シアンは悲しげに声を震わせてそっと背後から頭を俺の背中にてる。

 頭突きという程に強くはない。けど、何処か俺をめるような。それでいて俺が何も知らない事を理解しているのをかなしむような。そんな複雑な気配が背後から感じられた。これも、やはり大罪の因子を獲得かくとくしたからだろうか?

 以前より、人の感情に敏感びんかんになっている。感情の起伏きふくを僅かに察せる程度だけど。

 それでも、背後でシアンがかなしんでいるのは理解出来たから。

「まあ、今は良いよ。また何れ、ゆっくりとシアンについておしえてくれれば」

「は、い……」

 そう言って、シアンは再びだまり込んだ。

 今は分からなくても良い。ゆっくりと、少しずつあゆみ寄っていければ良い。

 何れ、シアンとも分かり合えればいいな。そう、俺は漠然ばくぜんと思っていた。

 ・・・ ・・・ ・・・

「ぬう、どうやら不確定因子イレギュラーが紛れ込んだようだ……」

 神域にて、神が僅かにうなる。不確定因子、それは即ち大罪の因子だ。

「私が遥か昔に封印ふういんした、我がゆがみ。やはり処分すべきだな」

 神はぱちんと指を軽快にらす。すると、神の眼前に一人の少年が現れた。

 自身が神の使徒と定めた三人、その最後の一人。葛城かつらぎゼンだ。彼は神の眼前にひれ伏し片膝をいた。

「神の使徒の一人、シドーが反逆はんぎゃくした。故にこれを始末しまつせよ」

「はっ」

 端的たんてきに告げる神に、これまた端的にゼンが答える。それ以上の言葉など不要。故にこれ以上に複雑な命令オーダーなどまた不要だった。

 それ故に、神はゼンに一言のみげる。

「行け!」

 神の命令に、ゼンはその場から即座に消えた。神の命令を遂行する為、神の命令を忠実に実行する為にゼンはある世界ばしょに向かった。

 それは、果たしてどのような結末けつまつへと向かうのか?

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