第56話 一蓮托生(6)

それから2週間後。明日香は結芽と動画制作の為に文化館のピアノ付きの小さな一室を借り、準備をしていた。今日は久しぶりに共演の動画を作る。結芽と明日香のコラボ動画は大好評で、動画をアップするとものすごい勢いで再生回数が上がる。



今回は日本の童謡を演奏することになり、誰でも耳にしたことがある懐かしい曲を5曲繋げてアレンジしたモノを音合わせしていた。


暫く練習をして喉も乾いてきたので、休憩しようと云う事になり明日香はコーヒーを買いに部屋から出た。お金を自販機に入れたとき「あれ?!先日助けていただいた方ですか?!」と後ろから声を掛けられた。


その声に明日香が振り返ると、見たことが有る男性が立っていた。

「あれ?!駐車場で会った方ですか?!」と聞いた。


「このような場所で再会するとは奇遇ですね。あの時はありがとうございました。」男性の穏やかな声と物腰に緊張もふっと解けた。


「いえ。こちらこそ美味しいお肉を頂いてしまい恐縮です。あの日の夕食は豪華で、家族に大好評でした。」


「それは良かった。今日は此処に用事でしたか?!僕は会社の用事でこちらに来たんですが、そのお陰で再会出来て良かった。」


「ええ。実は義姉と動画を作成していまして。」


「動画の配信者なんですね。そう云った方と会うのは初めてです。」


そんなやり取りをしていたら、結芽が顔を見せた。

「明日香?!コーヒー買いに出て中々帰って来ないからどうしたのかと思って…。あれ?!貴方はこの間の・・・」


「すみません。偶然お見掛けして声を掛けさせていただきました。貴女も先日お会いしましたね。

あの時はありがとうございました。そういえばお二人の名前を聞いていませんでした。僕は浦見幸彦と云います。」といって名刺を差し出した。名刺にあった会社名は誰もが知っている巨大企業だった。


「浦見さん。私達は名刺はありません。私は霧島明日香と言います。彼女は義姉で結芽と云います。」

「霧島結芽です。」


「そうですか。これも何かの縁です。僕はこちらには知り合いがいませんので、良かったら僕を友人の一人に加えて頂けませんか。連絡先を交換しましょう。」


会社名と真摯な彼の態度を見て、明日香と結芽も大丈夫そうだと判断し、「分かりました。」と言って、明日香の携帯番号を教えた。



「お二人は動画配信者だと伺いましたが、なにを配信しているんですか?!」


「私達は音楽家なんです。私はフルーティストで結芽はピアニスト。様々なジャンルの音楽をアレンジしながら個別に配信したり共演したりして配信しています。」チャンネル名を教えると、早速視聴してくれた。


「素晴らしい演奏ですね!それに登録者も再生回数もスゴイですね!!」と、驚きつつも感激した表情を浮かべた。


「ありがとうございます。二人だと有り難い事に再生回数上がるんですよ。」結芽はそう言って恥ずかしそうにしながらも嬉しそうに話した。


いつの間にか三人で缶コーヒーを飲みながら自販機の側の休憩所でそんな会話をしていた。すると浦見さんが時計を見て


「おっと。仕事に戻らないといけない時間です。楽しい時間はあっという間ですね。今度連絡させていただきます。茶飲み友達として、又話し相手になってくださいね?」

「はい。又お会いしましょう。」


そして浦見さんと別れて私達はまた動画配信に向けて準備を始めた。

その後アップした動画は全世代から高い評価を頂き、一日で一千万再生という驚異の数字で音楽系の動画でトップの再生回数となった。


素直に喜んだ明日香と結芽だが、そんな二人に危険が迫っている事はまだ知らなかった。


*********************************


いつもありがとうございます。フォローして頂けてとても励みになっています。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異類妖婚姻奇譚~魑魅魍魎、夫婦で浄化します~ 咲良 れい @015suzuki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ