第8話 悪因悪果(2)
巨大な蛇はとぐろを巻いている。真っ黒くて全長は多分15m位ある。太さも3m位ありそうだ。頭は2つに分かれ、それぞれに角が2本生えていて異常に赤く鋭い目つき。赤黒くて先が割れた舌をチロチロ出している。
蛇はメチャクチャ嫌いだ。生理的に受け付けない。ましてやこんな大きいサイズの蛇。
逃げ出したい気持ちを必死に抑えた。
「あれが
「はい・・・。」
私の気持ちを理解しているのか、「私が必ず守る」と言ってくれた。
少し安心して「はい」と答えた。
「久しぶりだなヤト。」人間の姿になった颯さんが積怨蛇に話しかけた。
「クク・・。お前とまた会うとはな。今度は封印なぞされない!積年の恨み晴らしてくれるわ!!」
ゴオオ!っという音と共にものすごい怨嗟の嵐が吹いた。
「ヤト。お前を傷つけたくはない。おとなしく元の場所に戻れ。」
「あやかし風情が偉そうに!元々お前もオオカミではないか!!身勝手で卑しい人間の味方をするのか!」
「お前の憎しみ、分からないではない。だがそんな人間ばかりではない。少なくとも私は助けられ救われている。」
(颯さん…。)
「俺は無数の人間の魂を食った。さっき取り込んだ奴らも含めて汚ない魂がほとんどだったがな!
汚い人間など俺が食って掃除してやるのさ!」
「そんな人間ばかりではない。お前達の魂を不憫に思い、手厚く供養していたではないか。そんな人々の想いは通じていなかったか」
「ふん!!そんな
「何を言っても無駄なようだな。400年前は封印に留めたが、どうやら間違っていたようだ。人間の魂と入り混じって聞く耳を持たなくなってしまった。今度は完全に浄化させる。」
「やれるものならやってみろ!俺はあの時とは違う。返り討ちにしてやる!!」
私は恐怖を覚えながらもそのやり取りを聞いて、次第に冷静になった。
この大蛇を颯さんはヤトと呼び完全に消してしまう浄化ではなく封印した。そして供養するように僧侶に伝え、現代まで寺で手厚く供養されていた。
それって、かつてはオオカミだった颯さんが、無残な最期を遂げてしまった動物達の気持ちを思い、人間に贖罪させ、両方に気持ちを分かって欲しかったのではないか。そんな気がした。
人間はかつての過ちを起こさないように400年ずっと供養し続けた。
だが、大蛇はかつて自分達を死に追いやった人間たちの魂も取り込んでいるので、怨嗟の炎は消えなかった。そう云う事だと思う。
私は涙が出るのを抑えられなかった。
「ごめんなさい…。辛かったでしょうね。苦しかったでしょうね。本当にごめんなさい…。」
謝るしかできなかった。
積怨蛇は憎しみの籠った目を私に向け、威嚇してきた。
「人間ではないか!何故こいつと一緒にいる!」
「私は颯さんの妻です。どうか、気持ちを鎮めてください。」
「そうか。そう云う事か!ならばお前から食ってやる!」
そう言い放ち、とぐろを巻いていた姿勢から一気に飛び掛かってきた。
半端ない恐怖が襲ったが、いつの間にか私の周りに結界が張られていて、積怨蛇ははじき返された。
「ヤト。お前の相手は私だ。間違えるな。」
「ふん!お前が先に死にたいならそうしてやる!覚悟しろ!」
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