世にも不思議な本屋のはなし【KAC20231】

あきのりんご

世にも不思議な本屋のはなし

 そこは年に二回、休日にだけ開店する不思議な本屋。

 街の本屋で扱うような本は、そこにはない。

 開店時間になると、その場にいる全員で拍手する。

 そして多種多様な書店員たちが、それぞれおすすめの本を出してくれる。

 どんな本があるのかというと。

 異世界の物語だったり、ミステリーだったり歴史ものだったり、何かを考察・評論するものだったり、絵本だったり遊べるものだったり。

 オリジナルだけでなく、大好きなアニメや漫画の「ああだったらいいな、こうだったらいいな」という妄想が詰まった本もたくさん取り扱っている。

 書店員によって表現手法も形式もさまざまある。

 神と呼ばれる絵師や字書きも存在する。

 彼らがそのまま書店員をしていることも多い。

 その姿もさまざまだ。

 小綺麗な格好をしている店員もいれば、徹夜明けで髪はボサボサ、部屋着のままといった姿の店員もいる。

 衣装も中身も、普段とは別人になりきった書店員も存在する。

 また、開店の間際まで製本する者、それどころか開店後も作業を続ける猛者もいる。

 なんとしても間に合わせる、そんな執念のようなものを漂わせながら一生懸命作業する。

 書店を訪れる者たちは小銭をたくさん用意して朝早くから並ぶ。

 前夜から並ぶことは禁止されているので、全員の安全のためルールを遵守する。

 開店直後は凄まじい熱気に押されるが、目当ての書店員のところまで頑張って進む。

 欲しかったものを無事に入手できた者もいれば、目の前で売り切れてしまい泣いてしまう者もいる。

 書店員側も悲喜こもごもだ。

 自慢の本が足りなくなる嬉しい悲鳴もあれば、まったく売れずに落ち込む者だっている。

 そして書店員と訪問者以外にも、書店そのものを円滑に運営するために働く者たちがいる。

 彼らのおかげで行列は綺麗に整理され、道は開かれる。


 そんな不思議な本屋に、あなたもきっと行きたくなる。

 本屋が次に開店するのは、お盆休み。

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