俺が放つ一矢

バネ屋

4月の新学期初日



 廊下を歩く足取りは、とんでも無い程に重い。

 先ほど見たクラス別けの貼り出しが、俺の憂鬱の原因だ。



 教室の入り口には数名の人だかりが出来ていた。 クラスでの席が張り出されているのを確認しているのだろう。


 自分もその人だかりに混じり、自分の席を確認してから教室に入る。



 教室内では、まだ半分も来ていないだろうか。

 既に来ているクラスメイト達は、まだ慣れないクラスに緊張と戸惑いを抱えている様子で、大きな声で騒ぐような人も居ない。


 教室内の静かな空気に、ほんの少しだけ気持ちが軽くなり、自分の席へと移動しイスに座る。



 そのまま一人でHRが始まるのを待っていると、次第に教室内の人が増えて若干賑やかになりつつあった。


 それでも俺は大人しく座ったままで、誰とも交流を持とうとはしなかった。




 そんな俺に絡んで来る馬鹿が一人居た。



「おい、金城!お前、サクラに捨てられたんだってな!悪かったな!寝取ったみたいになってな!」


 新学年の新学期初日の教室の、サクラも含めたみんなが居る中でこんな話するとか、やっぱりコイツは馬鹿だな。

 あ、コイツとしてはサクラに聞かせる為にやってんのか。


 ならば遠慮なく。


「やっぱりクラミジアの感染源、お前だったのか。俺はサクラとしかセックスしたことないから、どう考えてもサクラが感染源だからな?そのサクラを寝取ったって言うならお前がサクラの感染源で間違いないな。どうしてくれるんだ?治療費請求してやろうか?ん?お前もサクラとしかしていない? じゃあサクラはだれから病気貰ったんだよ!治療費払いたくないからって適当なこと言ってんじゃねーぞ!」



 その後、HRが始まる前にサクラは教室を飛び出していき、そのまま不登校となった。

 馬鹿の方は翌日以降も学校には来ていたが、クラス中からクズ扱いされて、今ではイキることも無く大人しい物だ。


 だがしかし、奴らに一矢報いることが出来た俺だが、同時に性病持ちとの誤解が広まり、学校中の女子からばい菌扱いされるようになった。



 解せぬ。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

俺が放つ一矢 バネ屋 @baneya0513

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説