電波ヒロインにはチャラ系秀才を①

あの不気味な本を見つけてからまたしばらく。

具体的には一か月ぐらい。


今年度最初のテストがあったのだが驚くべきことがあった。

ミアが成績で一位を獲得していた。

いや、あの感じから首位を取れるなんて思わないじゃないか!


慌ててミアに聞きに行ったら、


〈意外と簡単だった〉


だと。

基本的な部分は、異世界でも習得済みで、なんか大丈夫だったらしい。

応用も、俺に教わった所が出てきたらしい。

いや悔しい。

俺、ファムとルーシルにも負けて7位ぐらいだったんだが!?


〈今度、勉強も教えるよ~〉


と、ミアにニヤニヤ顔で言われたのは悔しかった。

そんなミアは、今日は学校の図書室に来ている。


……そう、次の攻略対象へのフラグが立ったのだ。

次は、生徒会書記、ルーフェス・シルバー伯爵令息。

もちろん生徒会の仕事はしていない。

どうやら、女遊びにお熱らしい。

でも、今回のテストは、ミアに次いで2位だった。

まぁ、そこを漬け込むらしいのだが。


俺は、書き写したノートを広げる。

そこには、ルーフェスをどう落とすかのチャートが記されていた。


丁度日付的には今日、図書室にルーファスが来る。

そこで、主人公と接触するのだ。


『へぇ、お前が俺より上の成績を取ったやつか』

『な、何ですか!?』


突然声を掛けられて警戒する主人公。


『まぁまぁ。そんな子猫ちゃんみたいに警戒することないでしょ?』


そう言って、主人公の顎をグイと持ち上げるルーファス。


『ねぇ、この後、俺と勉強会でもしない……?』



……俺は丁寧にノートを閉じる。

きつい。


ミア曰く、ルーファスは、《とりあえずテストで上位になるのが大変で、そこからは流されるだけだから攻略自体は簡単》と言っていた。

俺は再びノートを開く。

そこには、ルーファスを選んだ場合の彼の行動が描かれていた。


《ルーファスは、自分の力を隣国に売り、そこで得た権力で主人公と結婚。祖国を滅ぼす》


「何これ!」


え、どうしよう、売国奴いるし。

これ、動いた方がいいのか?

でも、今は何もしてないし……どっちかっていうと、この国に嫌気が差して出て行ったっぽいから、そっち方面で何とかならないか……?


俺はノートを閉じて、思案する。

……なるようになるか?

とりあえず、そうなる可能性と、その時どういう動きをするかは分かっているし、なんとかなるか。


俺は、状況を静観することに決めた。

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