高校卒業を前にして、、、

咲春藤華

これからどうするか、、、


 卒業2日前。

 受験も終わった。あとは結果を待つだけ。

 

 だと思っていた。

 

 受験することには何も言わなかった両親が「私立はいかせんよ」と言った。


 何を言っているんだ?

 おれは驚いた。

 母親が言ったセリフだったが、言ってから頭が理解するのにタイムラグが発生した。

 うちでは私立大学にいかせる、という考えは元はなかった。

 昔は国公立を卒業するものだと思っていた。

 しかし、弟がスポーツ推薦で私立高校に行く予定のため、我が家のハードルは下がったものと思った。だが、それは推薦であるため入学費や授業料などいろいろ負担されるらしい。


 おれは一般受験での入学だ。

 いかせない理由は、私立であるためお金が大量にかかるのだ。

 だから、もし受かっていたらアルバイトをして月々に少しだけでも返済できるように頑張るつもりだった。


 そして、立て続けに父が言った。「なぜ行きたいのか」と。

 手に職をつけたかったから。資格を取りたかったから。友達に誘われていたから。少しでも弟のために手伝いたかったから。

 

 頭に浮かんだが、何も言えなかった。

 母が「どうせ思いつきでしょ」と言ったから。

 

 さっきも言ったように、第一志望は国公立大学だった。

 

 そのため、高校も進学校に通っている。

 理系の高校で、ほかの高校と違い、大学に実験しに行ったり、地学研修や外国に研修、国をあげての研究発表会などがあった。

 あるはずだった。


 某ウイルスの蔓延防止のため、予定していたイベントの8割ほど、最悪9割を行えていない。


 国公立で詰まらないようにたくさん経験ができる高校を選んだつもりだった。

 結局なにもできなかった。

 数回、研究発表会で賞をとったが。

 この時点で国公立にいってもイベント、行事は行えないだろうと思った。

 他校、ほかの研究所と連携して行う第一志望では無理だ、と。


 だから、自校で完結している私立を受けた。


 なぜ行きたいのか?


 それを今更に言ってきた両親にむかついた。

 ああ、俺はむかついたと同時に失望したんだ。


 俺は今まであんたらの引いたレールの上を歩いてた。

 今の高校だって、通っていた中学も、母の母校である。と、「あなたの行く学校よ」と教えられてきた。


 自宅の近くには工業高校もあったが、目には入れてなかった。

 そこからでは大学に入りずらいと言われたから。


 第一志望の大学だって父の母校だ。

 そう教わってきた。


 父の質問は第一志望も第二の私立も含めて、なぜ? と聞いてきた。



 あんたらにそう教わったからだ!!!



 今まで、あらゆることを「どうせ思いつきでしょ」で否定されてきた。

 

 幼稚園の時の夢の「恐竜博士」は仲のいい友達と話して決めたものだ。

 卒園式、自分の夢を話終わったとき「どうせ図鑑見て、恐竜がかっこよくて決めたんでしょ。儲からないよ」と言われたことを覚えてる。


 小学生低学年、図工の授業で描いた絵が県で入賞した。

 先生や友達、両親に褒められた。

 初めて褒められた。

 だから将来、画家になりたい。と言った。

 「そのくらいの絵じゃ、生きていけないよ。どうせ褒められたから夢にしただけでしょ」 

 否定された。


 小学生高学年、同じく図工の授業。外部の建築の先生が来られた。

 自分の作った木で組み立てた模型をクラスのみんなの前で褒めてもらえた。

 先生からも建築士にならないか、と言われた。その道の人に褒められたのはうれしかった。

 ウキウキで両親に話した。

 「どうせ建築士になるって言うんでしょ。この家を建てたのは大工さんたちだけど、授業で褒められたぐらいじゃなれないよ」と。

 否定された。

 

 中学、おれの夢はなんにしよう。数学・理科の点数が高いから、生き物が好きだから。数学教師、動物園飼育員、獣医師。

 これも否定された。


 

 今までの夢はすべて否定された。

「どうせ」「どうせ」「どうせ」「どうせ」「どうせ」「どうせ」「どうせ」「どうせ」「どうせ」「どうせ」「どうせ」「どうせ」「どうせ」「どうせ」「どうせどうせどうせどうせどうせどうせどうせどうせどうせどうせどうせどうせどうせどうせどうせどうせどうせどうせどうせ、、、


 


 なりたい将来はなく、引かれたレールの上を歩くだけ。

 じゃあ、そのレールを外されたら?


 立ち止まる。動けない。


 自分のレールはとっくの昔になくなった。

 また、新なレールを作っても否定されるんだろうな、


 


 これを弟に話したら、大学行ったら金かかるから公務員試験受ければ? と言った。


 ……ああ、あの人たちと同じ血だ。




 俺はなにを目指して進めばいいんだろう。


 これから、どうすれば、、、


 そう、目の前のカッターナイフに問いかけた。


 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

高校卒業を前にして、、、 咲春藤華 @2sakiha

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ