第27話 君の気持ちが変化して

 結局、紗良は考えた末に俺と別れることを選んだ。

 紗良はずっと思っていたことを話してくれた。


 いつも優しくて、でも愛情を示せば答えてくれるだけの古都。そしていつもなにか別のことに気が散っているようなところ。同棲の話が進まなかったこと。


「私のことを好きなのは本当かも知れないけど、いつも不安だった。」


 がつんと頭を打ちのめされたような気分だった。自分ではなんとかうまくやれると思っていた反面、俺のような半端者が二人の女性と同時に付き合ったことがそもそもの間違いだったと。全然うまくやれてなどいなかったんだ。


「頼むよ。もう一度考え直してくれないか?」

「頼む。悪いところは直すから。」


 なにを言っても紗良はもう別れを決めていたんだ。



 しばらくして、同じ職場である紗良と顔を毎日合わせるのに、どうにも仕事以外の接触を断られ続けた俺はいたたまれなくなって会社を退職してしまった。


「もう、俺も実家に帰ろうかな・・・。」


 そんな風にも考えながら、転職先を探す。やりきれずに今日は喜美を飲みに誘った。これもダメな奴のすることかな。自分より若い女の子に弱みだけ話すために会うなんて、、。そう自虐的になりつつ・・・


喜美「えー、フラれちゃったんですかぁ?」


古都「うん。」


喜美「それで、会うのが辛くて仕事も辞めたと。。」


古都「情けないだろ?」


喜美「うーん、ぶっちゃけ。ハイ。」


 ははは、と乾いた笑いをする俺。本当に情けない。


古都「俺は、もうこれからはちゃんと、優柔不断もしないよ。愛情も自分からちゃんと示す。他の女に流されない。もうわかったんだ。だけど取り合ってくれなかった。」


喜美「うわぁ、ものすごくダメな男のセリフですね。笑」


古都「だよな。」


 あー、でも、このくらいはっきり言ってくれる子がいて良かった。もっとダメ出しされて、それで切り替えよう。


喜美「じゃあ、ついに古都さんは私と付き合えば良いですよ。」


古都「は?なに言ってんだ。。もっと他に良い奴が山ほどいるぞ。」


喜美「良いんです。ダメでも。ずっと手に入らなかった者が手に入るんです。多少の不備不具合は構わないです。」


古都「なにを、、え、本気で言ってるのか?」


喜美「ハイ。私は古都さんと付き合いたいし好きです。ずっと本気で好きです。」


「ね、付き合いましょう。」


古都「え、、こんなんでいいのか?」


喜美「ハイ。こんなんでいいんです。」




 喜美の心の声


 やっと、古都さんが独りになった。待った甲斐あって、古都さんのダメなところは全部、他の女が修正してくれた。これで私が最終的に一番良い古都さんを手に入れたんだ。


「待つのって、苦しいけど。でも、私は手に入れた。」


 きっと、古都さんはこれから、私だけに愛を注いでくれる。



 しばらくして、俺は転職先も決まり新しい職場で働き出した。そして俺には今、喜美という新しい恋人がいる。


「古都さん、おかえり。」


「喜美、ただいま。」



「喜美、愛してるよ。」


「ふふ、私も愛してるよ。」



 俺は今、一番楽しい。




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成長が必要な時は願望実現まで少し時間がかかるっていう話を書きたかったんです。


お読み頂きありがとうございました。





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実家の裏庭にある祠を掃除したらモテ期が来た 葉っぱ @gibeon

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