第12話 ここで参戦ラッシュ!?

 喜美視点が続きます。


 古都さんが来てしばらく、慎也さんと二人で話している。


 バイト中だからそんなに頻繁に近くに行けないけど、なんとなく恋愛相談っぽい?まじでそれだったらへこむんですけど。女性の名前が出たのは聞こえてきた。


 ん?ちょっと様子がおかしい?


 んん?慎也さん、怒ってない?まじで?喧嘩とか初めて見るけど。


 え?え?慎也さんがこっちに来る。


「ちょ、ちょっと。慎也さん、大丈夫なんですか?」


「ちょっと休憩もらってくるわ。」


「ちょ、え?」


「あ、喜美。古都の話聞いてやったら?しょうもない話だけど、それでも好きなら落とせるかもよ。あいつ優柔不断だから。」 


 な、なにそれ。なんか言い方が棘があるって言うか。。


 ちょ、ちょっとだけ話しかけてみるかな・・・


 恐る恐る、古都さんのところに近づいてみた。


 うわ、なんかうなだれてるよ。話しかけにくいな。


喜美「・・・古都さん?」


古都「ああ、喜美ちゃん。お疲れ。」


喜美「顔、、あきらかに青ざめてますけど、大丈夫です?」


古都「いや、大丈夫・・・じゃないけど。気にしないでいいから。」


喜美「う、うう~っと、あの、恋愛の悩みです?」


古都「いや、まぁ、そんな感じ。ごめん、恥ずかしいなこんなの。」


喜美「あ、あの!だったら!女の方が良くないですか?」


古都「え?」


喜美「だからっ。恋愛相談なら、女性の目線のほうが良いでしょ?だからっ、私が!聞きますよ?」


 古都さんが少し驚いた顔をして考えるような仕草をした。


古都「いや、そんな喜美ちゃんにできるような話じゃなくってさ。ホント、馬鹿な話で・・・。」


喜美「大丈夫です、私が聞きます!夜!あ、私バイト終わったら連絡するんで、ね?」


 私は足早にレジに向かうと、メモ用紙とペンを取って古都さんのところに戻った。


喜美「はい、これ。私の連絡先です。古都さんのも今書いて私にください。ね?」


 ちょっと迷っている感じの古都さんに断られまいと、私は勢いで自分の連絡先を渡し、メモ用紙とペンを古都さんに押しつけた。


喜美「ね、古都さん。おうちで待っててください。すぐ連絡しますから。」


 渋々と行った様子で、とりあえずと連絡先は交換してくれた。


 さすがにこれ以上ここでサボっているわけにはいかない。早く仕事に戻らないと・・・と店内に目をやると、休憩から慎也さんが戻ってきたみたい。


 慎也さんが古都さんに近づいて、


「おい、古都。俺今、佳奈ちゃんに電話したから。今度の休み、地元に帰るから遊んでくれって言った。」


 なんなの?女の取り合いみたいな感じ?!え?私無理じゃない?


 も、もうっ、とりあえず仕事もどろっ





 あの後、古都さんはしばらくして帰った。私はバイトが終わると早足で自宅に帰った。早く、古都さんの話を聞きたいから。


 私は一人暮らしのマンションに帰ると、すぐに部屋着に着替えて飲み物を用意した。長話になる想定で。


 そして、息を整えると、断られないようにメッセージも入れずに電話をかけた。


 5回コールした頃だろうか、古都さんは電話に出てくれた。


 私に相談するのは躊躇いがあるようなのは変わらないみたい。でも私はやや無理矢理聞き出そうとした。「女性の気持ちは男性にはわかりませんよ。」と説得して。


 やっと思い口を開いてくれて聞き出せたのはこんな内容。


 古都さんにはずっと仲が良かった幼なじみがいて、その人は慎也さんとも同級生である。先日一緒に来ていた女性らしい。古都さんはその人がとても大切で、その人は古都さんに長く片思いをしていたらしい。だけど、古都さんには好きな人がいて、その人と両思いだと最近わかった。


 ああ、嫌だ、、。私今失恋したんだけど。ちょっと今なに話していいかわからない。


 それで・・・古都さんはその幼なじみに付き合えないと言いたいのだが、どう話せば仲違いせずに伝えられるか、といった感じだ。



喜美「古都さん。古都さんは、その会社の女性を選ぶんですよね?」


古都「そう。」


喜美「それで、幼なじみさんとは付き合えない。ですよね?」


古都「そう、なるな。」


喜美「それで、慎也さんがまさかの参戦をしてきたと。それが今日の話ですね?」


古都「ああ、あいつがどこまで本気なのかわからないけど。」


喜美「それはひとまずおいておきましょう。ていうか、慎也さんがその幼なじみさんともし付き合うとしたら、古都さんは嫌ですか?」


古都「・・・慎也が軽い気持ちで言ってるならそれは、嫌というかダメだと、思う。というか、佳奈の、幼なじみの気持ちが何より大事であって・・・」


喜美「わかりました。うん。古都さん、あのね?」


  「優しさがかえって人を傷つけることってあるんですよ。好きな人に受け入れてもらえないのに優しくされるのは、場合によってはとても残酷なことなんです。」


古都「・・・。」


喜美「古都さんは、その人と付き合えないんです。だったら、きっぱりと忘れるための時間を彼女にあげるべきです。もし、その間に慎也さんが彼女の心を癒やすことができたなら、古都さんはちゃんと認めるべきだと思います。」



 「私だったら、付き合えないけど大切な友達だからって言われてしまえば、ずっと忘れることができずに引きずってしまうと思います。だから一度は彼女の気持ちの整理がつくまで仲良くしたいなんて言わないであげてください。それが一番辛いと思うから。」



古都「そうか。でも、俺は、彼女の気持ちが本当に嬉しくて、、」


喜美「わかります。でも、突き放さずに優しくするのは彼女にとって残酷なことかも知れないって、一度考えて見てくださいね?」


古都「ああ、わかった。そうか、、。ふぅ、、喜美ちゃん、ありがとう。言われなければわからなかったことだった。」


喜美「少しでもお役に立てたのなら良かったです。」


(ああ、幼なじみさんの恋も終わるけど、私の恋も終わっちゃうなぁ・・・)


喜美「それで、慎也さんはその幼なじみさんが古都さんを忘れて自分と付き合うように頑張るってことですよね?」


古都「まぁ、どこまで本気かわからんが、そう言ってはいた。」


喜美「慎也さん、すごいな。そんな一面があったとは。」


古都「本気ならな?」


(古都さん、幼なじみさんのこと取られたくないのかな。こういうところが優柔不断ってことなのね。だから慎也さんは私にも落とせるって言い方をしたんだ。)


あーーーーーー!なんか、なんか、なんか、むかつくーーーー!!!






喜美「古都さん。私も実は古都さんのことちょっと良いなって思ってたんですよ?」






ああ。言っちゃった。



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