エピローグ  新たなる二学期の始まり!

「いってらっしゃい!」

「いってきまーす」

 今日から二学期は始まる! 白色半そでカッターシャツに、学生服の黒色ズボンプラス学校指定紺色セカバン装備の僕は、セカバンよりもうちょっと濃い紺色の運動靴を履き、母さんに見送られながら、道森家玄関のドアを開けた。

 朝の日差しにまぶしってちょっとなったけど、もっとまぶしき笑顔が。

「お、おはよっ」

「おはよう」

 なんと! 白色半そでカッターシャツに紺色スカート+学校指定紺色セカバン装備の結依ちゃんが、すぐそこにいるではないか!

 説明しよう! なぜ結依ちゃんが出迎えてくれたのかというと、プールへ一緒に行ったときに、始業式の日に一緒に登校したいと、結依ちゃんから誘ってきてくれたからである!

 実は僕もそれをちょっと考えていたから、僕も言おうと思ったと言ったうえで、今日この流れとなった。

 結依ちゃんの家は学校からの距離的に、僕の家よりも遠いし、特に遠回りというわけでもないので、集合場所は僕の家の前となった。

 だがちょっと待ってほしい! 半そで装備も確かに注目ポイントだが、なんと! 髪型がっ!

「今日はその髪なんだねっ」

 ポニテ仕様であったのだ!!

「……雪忠くんが、いいって、言ってたから」

 言いましたよぅ。姉ちゃんがポニテ化させたときに。

 ちなみにプールのときは、後ろにおだんご作ってた。

「まさか、姉ちゃんいなくてもしてくれるなんて」

 なんか言い方が、ポニーテール同好会入会者みたいな言い方になってしまった。

 結依ちゃんは、やっぱりちょっと首の辺りに、手を当てている。


 学校へ向けて歩きだすと、いつもの結依ちゃんが左隣にいるはずだけど、半そでアンドポニテ結依ちゃんがそこにいるので、一緒の人だけど、なんだか違うみたいな。でも一緒の人なんだなぁ、みたいな、そんな堂々巡りが頭の中で展開されている。

「に、二学期始まったね」

「うん」

 やはり結依ちゃんは結依ちゃんである。いつものうんが証拠である。

(何話そ)

「きょ、今日もいい天気ですね!」

「うん」

 おぅ。

「体調大丈夫?」

「うん」

 あれ、だんだん笑ってきてる? ということはつまり……

「今日始業式だから、ちゃんと上靴持ってきましたか?」

「うん」

 お。つまりこの流れは……

「今日は天気いいから、傘なくて大丈夫そうだね?」

「うん」

「一緒にやったから、宿題、ちゃんと終わってるよね?」

「うん」

「マンガに比べたら、うちの校長先生の話、そんなに長くないよね?」

「うん」

 だんだん笑う結依ちゃん。じゃあそろそろとどめ。

「……結依ちゃん今日もかわいいね?」

 ごめん。めっちゃ調子乗った。

(でもしょうがないじゃん! 半そでポニテ結依ちゃんだよ?!)

 おーっと結依ちゃん右手がほっぺたに! 最近見せてくれるてれてれ結依ちゃん出現だー! 顔の角度もてれてれ度を物語っているー!

(わくわく)

 どきどき。

「………………そこはうんでしょ結依ちゃん!」

「くすっ」

 とうとう結依ちゃん、笑顔に声がちょっと出ちゃった。

「おはよーゆいりんもりりんー」

「ゆっきーちゃんだぁ!」

「おっはーゆっきー! おっはーゆいにゃゆいにゃぁーん?!」

 なんと穂乃美・京香ちゃん・淋子軍団とエンカウントしたぞ! 淋子だけなんか驚いた顔してる。

「おはよ」

「おはよう」

「ゆいにゃんどうしたのそのポニテ! かわいすぎなんですけど!」

 ちぇっ。淋子はさらっと言えんだなこんちきしょっ!

(……さっきの僕も、割とさらっと言えたようなゲフゴホ)

 結依ちゃんは、やっぱり首の辺りにおててが。首痛い系男子雑誌でよく見るポーズならぬ、首痛い系ポニテ結依ちゃん?

「似合ってるよーゆいりん~」

 穂乃美はのほほん。

「かわいいですぅ!」

 京香ちゃんはお元気。

 褒められまくりの結依ちゃんは、お顔がちょっと下がって、ちょぴっとてれ笑顔。いい。すばらしい。すてきだ。最高だ。最強だ。

「あら、ぞろぞろと歩いているわね。おはよう、ゆっきーちゃん」

「ちょっ」

 なんと汐織・矢鍋・瑛那軍団ともエンカウントしたぞ! みんなのおはよーが乱れ飛ぶ!

「ゆっきーちゃんは、やっぱりゆっきーちゃんですよねぇ!」

「えーもりりんはもりりんって感じー?」

「長いよー。ゆっきーの方が呼びやすいじゃん?」

「ゆっきーちゃんも、悪くないと思うわ」

「雪忠は……雪忠よ」

「道森、結構あだ名持ってるんだな」

「みんななんか言いたい放題?!」

 結依ちゃん笑ってる。

「私、雪忠くんって呼んでる」

「まさかの結依ちゃんも参戦」

 えらく笑いやがって前の集団こんにゃろめっ!

 今のフォーメーションは、前方:穂乃美・淋子・京香ちゃん。中盤:矢鍋・瑛那・汐織。後方:結依ちゃん・僕。

 八人で登校とか、もはや通学団?

「雪忠、今日もたくさん持ってきたの?」

「ん? ああ、うん」

 僕はセカバンを少し持ち上げる動作をさせた。って、これじゃ重さ伝わんない?

「おはよう」

「うおわ!? お、おはよ若稲っ」

 背後から不意打ちを仕掛けてきたのは、若稲だった!

「あ! あたし持ち上げた先輩!」

「……ふんっ」

 親指上げる若稲の登場に、またもおはよーが乱れ飛ぶ通学団。これで九人だと?!

「のわっちは、ゆっきーのことなんて呼んでたっけ?」

「道森」

「普通だねぇ~」

「なんでその話題、そんな盛り上がってるの」

 背後から現れた若稲だったけど、最前方まで進んで、京香ちゃんの右隣に並んだ。

 京香ちゃんのおっきぃ~というご感想に対して、見下ろす若稲。

「大きいと服を探すのが大変って聞くけど、乃和ちゃんも大変なのかしら?」

「大丈夫」

「そ、そう、よかったわね。どうしてドヤ顔……?」

 汐織にドヤ顔する若稲。う~んやはりまだまだ謎多き人物?

「ぜぇー、くぁー、は、はえーよ若稲ぁ……」

「んおー……」

 ときたら、奥茂と六場まで合流だと?! てかなんでそんなぜーはー疲れてんだ?

 それでもみんなから、おはよーが乱れ飛ぶ。まさかまさかの二桁突入。

 本来通学団がない中学生で、二桁集団登校なんて、たぶん三年生まできて、初めての出来事だと思う。

「な、なにがあったのさ?」

「若稲が、この集団見つけて、行こう、って言ったら、全力、疾走……」

「速すぎる、ぞ……」

 という説明が、腰に手を当て下を向く奥茂と、上を向く六場からあったけど、若稲は超余裕そうに見えます……よ?

「ねーてっととーじー、ゆっきーはゆっきーって感じだよねー?」

「はぁ~? なんじゃ、そりゃぁ……っつーかちょっと待ってくれぇ……ぜぁー……」

 ど、どれだけ遠いところから全力疾走したんだろう?

 奥茂と六場は、ぜーはー言いながらも、呼ばれたことから二列目へ入っていった。やっぱり僕たちは最後方。

 今日は朝からなんてにぎやかな。これが二学期始めの朝だというのかっ!

 左隣には結依ちゃんいるし! 向いたらこっち向いてくれるし! にこっとしてくれるし! すばらしいし!

「雪忠くんの周りは、友達も、笑顔もいっぱい」

 美しい声で、結依ちゃんはそう、僕に言ってくれたけど、僕は……ちょっと右手を縦にして口元に寄せ、ひそひそモード。

 結依ちゃんは耳を傾けてくれて、

(って近いけど!)

「結依ちゃんの笑顔も……ね」

 わざわざそこまで、ひそひそする内容でもなかったかもしれないけど、まぁすぐ目の前には、友達集団がいるわけだしねごほん。

 うんはなかったけど、結依ちゃん美しい瞳でこっち見てる。あ、結依ちゃんもひそひそモード? なんでございましょ。僕は耳を傾けて、

「…………大好きっ」

 ………………結依ちゃんの顔見たいけど、見られない。あらゆる場面で、あらゆる人物からやばいっていう単語を聞いてきたけど、これは本気マジでガチでやばい。

 どきどき。うれしさ。うへうへ。そんな直線的な気持ちと一緒に、こんなかわいい結依ちゃんのことを、いつまでも楽しませていってあげたい、そういう気持ちにもなった。ってまぁ、それは前からかてへぺろ。

「ねーゆっきーどう思う~?」

「ぇ、なになに?」

 なになにの最初のなの部分が、声ちょっと裏返ったかもしれない。

 こんなどきどきと一緒に……中学三年生の二学期、新しい学校生活が始まっていくようだ。

(やっぱり結依ちゃん見ちゃお)

 僕は幸せだ。こんなにも笑顔満開な結依ちゃんや、めっちゃにぎやかな友達に囲まれて。



長編10作目  数ある本日のお近づきをばっ  ~おしまい~

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長編10作目  数ある本日のお近づきをばっ 帝王Tsuyamasama @TeiohAoyamacho

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