第十三話  またまた教室が盛り上がっているようで

「ぎゃー!」


「道森ー」


「また戦ってくれ」

「ウッウッ」


「さすがに指相撲では、お互い同じくらいの強さじゃないかしら」


「ウッウッ」

「きっと雪忠にも、強いことはあるわ……」

「ウッウッ」

「えーゆっきーえななにも負けたのぉ?!」

「ウッウッ!」



 ……漢は勝負を挑まれれば、必ず受けて立つもの。それが漢であり、それが漢の生き様。

 だけどさぁ~。こんなに負けてばっかりっていうのは、さすがにださくない……?

(き、きっと。これは神々が与えし試練なのだ! 勇者になるためには、勝ちだけではなく、負けも知れということなんだ!)

 ああ……本日も実によい空だ……そう。空が僕を見守ってくれている。あの空はあんなに大きいじゃないか。小さな負けにくよくよしてはいけない。最後に勝てればそれですべてよいのだ……ははっ。

「うあわあ!」

 またも忍び結依ちゃんが右隣にぃ!

(ある意味結依ちゃんには全敗)

「ゆ、結依ちゃんも帰るところなんだー。一緒に行く?」

「うん」


 なんだか最近、結依ちゃんと一緒に帰る日が増えている気がする。

 休みの日に会う多さは、あんまり変わってないかな。それでも同級生女子の中でぶっちぎり一位だけど。

 この団地の中を一緒に帰ることも、いっぱいしてきたなぁ。

 小学生が通ったり、車がたまに通ったり。結依ちゃんといろんな日を、こうして帰ってきたなぁ。

「雪忠くん」

「な、なに?」

 そして、こうしていっぱい呼んできてくれた結依ちゃん。

「今度の日曜日、おうちに来てほしい」

「今度の日曜日だね。もちろん」

 予定空いてます。問題なしっ。

「一時でいい?」

 たまにはここで、定番の。

「夜の?」

 さあ、結依ちゃんの反応や、いかに。おーよいまばたきですね~。あ、少し首が横に振られました。

「お昼の」

「わかった、夜の一時だね」

 二段構え。あ、ちょっと笑顔でまた首が横に振られ。

「お昼の」

「お昼のね」

 一瞬止まったけど、ちょっと笑ってくれた。

「うん」

 ほんと結依ちゃん、笑ってくれるなぁ。こんなちょっとしたことでも。

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